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シリア/シリア難民

レバノン:アルサールのシリア難民キャンプでの新たな食糧支援事業

こんにちは!2020年4月より、レバノンのバールベック・ヘルメール県アルサール市で新たに食糧支援事業をスタートしました。先日の記事では、1回目の食糧バスケット配布についてお知らせしましたが、今回の食糧支援事業は、食糧バスケットを配るだけではありません。今回は事業内容につていてもう少し詳しくお話します。

パルシックの新しい食糧支援事業って何をするの?

さて、2020年5月現在、レバノンはこれまで以上に経済的に厳しい状況に追いやられています。経済危機で物価が昨年10月比で2~3倍上昇し、新型コロナウィルス対策による厳しい外出制限で[1] 多くの人びとが、2カ月間労働収入が無い中、何とか生き抜いているという状況です。そのような中で、今回新たに始まった食糧支援事業は、食糧バスケット配布と、家庭菜園研修という2つの大きな柱から成ります。

食糧バスケットには、1世帯当たり25ドル分の小麦粉、スパゲッティ、米、豆、トマト缶、ツナ缶、植物油、砂糖、塩等の基本的な食糧が入っています。レバノンに滞在するシリア難民の9割以上が食糧不足の状況にあり、食糧を買うのですら借金をせざるを得ないような状況で、パルシックの食糧配布は、食糧を入手するための貴重な機会となっています。

5月13日に配布した食糧バスケットの中身

しかし、食糧バスケットで配布する食糧はどうしても長期間の保存ができる食品に限られます。また、経済的に苦しい場合、まずは安く空腹が満たされるものを、ということで、レバノンのシリア難民の人びとは[2] 炭水化物ばかり摂取し、動物性たんぱく質やビタミン、鉄分等が含まれる肉や野菜といった生鮮食品をとる頻度が低いこと、摂取する食べ物の多様性が乏しい傾向にあることが分かっており、子どもが体調を崩しやすいこと[3] が報告されています。

ただ、現在のように大幅な物価上昇と収入が限られた中では、いくら栄養バランスを考えて肉や野菜を食べる方が良いと難民の方は理解していても、現実には買うお金が無いのだからどうしようもありません。そこで、パルシックは、プランターやポットで行う家庭菜園の研修を、食糧バスケットの配布対象者のうちの希望者に対して、併せて実施することを計画しています。うまく育てることができれば、新鮮な野菜や中東料理には欠かせないハーブを自分の手で、しかも無料で摂取することができるようになります。これにより、難民生活を強いられている人びとが、必要なビタミンや栄養素の一部を摂取することができるようになります。パルシックでは、難民の栄養状況が少しでも改善されて健康に暮らせるお手伝いができればと考えているのです。

家庭菜園イメージ

もう一つ重要な点は、家庭菜園の研修を受ける人びとに対し、栄養研修も実施することです。シリア難民女性には、リプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)に関する正しい知識が乏しい傾向にあり、妊娠中に摂取すべきビタミンや鉄分等を適切に摂取しなかった女性も一定数いることが報告されています 。栄養研修では、特に妊婦や母乳育児をしている女性が、どのような栄養・食品を何のために摂る必要があるか、食糧バスケットで配布する食糧と家庭菜園から採れる野菜やハーブをどのように調理すれば、必要な栄養を効率よく摂取できるかについて学び、日々の生活に取り入れてもらうようにします。これにより、すぐには効果が出ないかもしれませんが、特に妊婦や母乳育児をする女性や幼い子どもの健康の増進に徐々につながっていくことが期待されています。

それでは、どんな野菜やハーブが育っていくのか、その収穫模様や研修の様子など、今後お伝えしていきますので、よろしくお願いいたします。

[1] Hussain Dakroub, Daily Star Lebanon “Cabinet to approve two-week lockdown extension” 2020年5月19日 (外出制限は、5月24日までの予定でしたが、感染者が増えたため、5月21日に6月7日までの外出制限延長が実際に承認されました。)(2020年5月21日アクセス)
[2] レバノンやシリア、難民に限ったことではありません。私もお金のない学生時代は同じような傾向にありましたし、レバノンに住む今も、たんぱく源の肉や魚は高いため、比較的安価な卵や豆類の摂取を増やす対処をとっています。
[3] UNHCR, UNCEF & WFP, “VASYR 2019 – Vulnerability Assessment of Syrian Refugees in Lebanon” (2019) P78

(レバノン事務所 風間)

※この事業はジャパン・プラットフォームからの助成と皆さまからのご寄付で実施しています。