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シリア難民

離れていても、つながる体験 −シリア難民の子ども達とラマダーン特別プログラム−

ラマダーンとはイスラム暦のなかでも神聖な第9月の27日間を指し、ムスリムにとって最も大切な義務の1つである断食が日の出から日没まで行われます。ラマダーンは一般的に「断食」のイメージが強くもたれますが、実際は断食だけでなく様々な禁欲の励行や生活摂生が求められ、アッラー(イスラム教の神)への感謝や弱者への共感が励まされます。宗教的な儀式のひとつでありながら、断食明けの1日の初めの食事である「イフタール」は、人びとが集って飲食を共にし、家族いかんに関わらず非常に家庭的な温かみに包まれる時間になります。

このムスリムにとって大切なラマダーンを、難民として避難先のトルコで過ごす子どもたちとも一緒に祝いたい、就学機会がなく、仲間との共同体験ができない子ども達に特別な経験をしてもらいたい、という思いから、子ども保護事業の一環としてラマダーン特別プログラムを実施しました。「ラマダーン」という言葉をひと文字ずつ対象村で装飾・作成し、最後に繋げて「ラマダーン」という1つの作品として完成させ、離れた村で避難生活を送る子どもたちの共同体験を育むというものです。また、作成中の様子や完成後の様子、他村の子ども達へのビデオメッセージを写真や映像として撮影しました。これをスタッフがまとめ映像作品として編集し、各村で上映して、それぞれが繋がってひとつのものを創り上げた感覚を持ってもらえるよう工夫しました。

他の村の子ども達と一緒に完成した「ラマダーン」の絵画作品

他の村の子ども達と一緒に完成した「ラマダーン」の絵画作品

ひとつのものを仲間と創り上げる、という体験が日常で欠けている子どもたちは、1枚の大きな紙に一緒になにかを描く、ということ自体が難しいことがあります。ペンやクレヨンの取り合い、場所の取り合い、役割分担の難しさ、他者に対するコントロール欲求など、学校など年齢に適した社会参加の機会を失い、社会性の学びに遅れがある子どもたちは、1つの活動のなかでも困難に直面することがあります。しかし、スタッフの介入のなか、見守られた環境で作品を制作し、子どもたちは今までになかった体験を楽しみ成功させようと、お互いを尊重して集中して取り組むことができました。

完成した映像作品を鑑賞する子どもたち

完成した映像作品を鑑賞する子どもたち

他村へのビデオメッセージを撮影する際、子どもたちは自分がテレビのスターになったような気分になり興奮が収まらない様子でしたが、スタッフと共に数回のNGカットを乗り越え撮影もこなすことができました。映像作品の上映では「ラマダーン」という文字だけでなく、他村の家屋の様子や子どもたちの身なり・行動にも注目しており、普段は自分の村から出かける機会もない子どもたちにとって、非常に刺激的な体験となりました。

避難先で困窮した生活を送る子どもたちにも、特別な体験、好奇心や希望を育むことのできる体験を、今後もチームスタッフと共に探っていきます。

(シャンルウルファ事務所 高田)
※この事業はジャパン・プラットフォームの助成と、皆さまからのご寄付で実施しています。