PARCIC

西岸地区ジャマインでの地域循環型農業事業

ジャマイン環境クラブメンバーへの家庭訪問

環境クラブの課外活動に手作りのハムチーズサンドを差し入れしてくれたお母さんたち

環境クラブの課外活動に手作りのハムチーズサンドを差し入れしてくれたお母さんたち

2016年に結成されたジャマイン環境クラブ。堆肥化やリサイクルを通じて、学生や地域住民の環境意識を高め、一人ひとりが責任をもった地域社会の形成を目指して活動しています。いつも学生たちと同じ目線にたって活動することを心がけている私たちパルシックチームですが「環境クラブの活動を、親御さんたちはどう思っているのだろう?」という疑問から、環境クラブメンバーのお家を訪問し、聞いてみることに。4人のお母さんが快くインタビューに答えてくれました。

環境クラブメンバー  ワファーさん一家

ワファーさんはクウェート生まれ、4歳の時に家族と一緒にジャマインにやってきました。16歳で結婚したため、学業を続けることはありませんでした。タウジーヒ(パレスチナの全国統一センター試験)の勉強も大学進学もしなかった彼女ですが、息子と娘の教育には強いこだわりを持っています。3カ月と長いパレスチナの学校の夏休みには、息子を太陽が照りつく昼間の作業現場の手伝いに行かせています。

「しっかり勉強しないと、ずっと労働者のままよ。」

と気づかせるための、彼女なりの教育方針だと言います。

ワファーさんと子どもたちとの絆は強く、子どもたちは学校から帰ると、1日の出来事をワファーさんにまくしたてます。家に着いて母親を探し、今日クラブで学んだことを興奮して伝える子どもたちの目はキラキラしているといいます。ワファーさんが台所で食事や料理をしていると

「あー!お母さん!堆肥作りに使うから残った野菜とっておくの忘れないでね」

と飛んできます。

「正直言って、家庭菜園の方法も堆肥作りのために生ゴミを捨てちゃいけないってことも子どもたちから学んだの」。

とワファーさん。

環境クラブメンバー  イマーンさん一家

専業主婦のイマーンさんには4人の子どもがいます。彼女は環境クラブの活動で、息子がどう変わったかについて話してくれました。シャイで少し引っ込み思案の息子は、クラブでしょっちゅう新しい人に会って交流するなかで、以前よりも強い心の持ち主になったといいます。イマーンさんは息子について語ってくれました。

「息子は高校に拘束されているとも感じているようだけど、自然と前向きになれる何かを探しているみたい。パルシックの活動にもいち早く参加を名乗り出たし、学校の授業以上に環境クラブの活動を気にかけてるの」。

オリーブの木の前で歯に噛みスマイルの男子学生たち

オリーブの木の前で、はにかみスマイルの男子学生たち

環境クラブメンバー  アリアさん一家

女性組合のメンバーで、以前コンポストづくりにも参加したことがあるアリアさんは、ベネズエラで生まれ育ちました。当時、海外に住むパレスチナ人女性の多くが、16歳になると、パレスチナID取得の規定や、結婚に対する家族の方針などを背景に、移住国を離れてパレスチナに戻らなければなりませんでした。アリアさんもベネズエラを離れ、パレスチナで結婚しました。アリアさんにはベネズエラの国籍もありますが、子どもたちにその国籍を付与するためには、1年以上の現地滞在や登録のための莫大なお金が必要でした。移動の自由が大きく制限されたパレスチナのパスポート以外に、異なるパスポートを持つことにはもちろんたくさん利点がありますが、経済的な理由から彼女がその選択をとることはできませんでした。

娘たちは声を揃えて、アリアさんに繰り返し訴えます。

「ママ、なんでそうしなかったの~!パレスチナのパスポートだけじゃなくて、別の強力なパスポートがあったら最高なのに!」

アリアさんは答えます。

「そうね、それは助けにはなるけど。でもママを信じなさい。あなたの人生に差をつけ、世界への扉を開く唯一の方法は、しっかり勉強していい成績をとることよ」。

アリアさんは、石切り場の粉塵によって、なぜジャマインが特別注目される存在になったかについて話してくれます。

「通りを歩くと、全部真っ白でしょ。窓を開けることさえできないのよ。これは癌や喘息みたいな病気の原因にもなる。人間だけじゃなくて、木も被害を受けている。前はたくさんの人がジャマインにオリーブオイルを買いに来てたけど、今はオリーブオイルの質も量も粉塵の影響を受けている。ジャマインのすべての木が、今は真っ白で弱々しくなってしまった」。

ジャマインの環境問題を深刻に受け止めるアリアさんに、「一番の悩みは?」と聞くと、8人の子どもの育児と、学校、大学の授業料、それに親戚名義の今の住居からいつ追い出されるか分からないからびくびくしていること、とポロっと本音もこぼれました。

環境クラブメンバー  エルハムさん一家

エルハムさんは30歳、2人の子どものお母さん。12歳のときに結婚しましたが、夫は第二次インティファーダの際に逮捕され、18年間イスラエルの刑務所に服役しています。エルハムさんは夫の代わりに家族の重要な役割を果たすことになりました。

最近の息子の行動に環境意識の高まりを見たエルハムさんは、自分も親として環境活動に取り組む必要性を認識したといいます。

エルハムさんは、他の親たちにも子どもを環境クラブに入れるようぜひ勧めたい、と話してくれました。すべての学校が主導して学校内に環境クラブをつくれば、パレスチナの学生たちが環境に関する新しい情報や経験を享受できるからだといいます。

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インタビューから、お母さんたちが環境教育の重要性を認識していることは一目瞭然でした。全員に共通していたのは、環境クラブが子どもの性格や特性に変化を生んでいると感じていること、そして早婚[1]のために果たせなかった自分たちの夢や目標を子どもたちには叶えてほしいと願っていることでした。

ごみゼロランチの様子:万国共通、女子たちはおしゃべりが止まらない

ごみゼロランチの様子:万国共通、女子たちはおしゃべりが止まらない!

[1] パレスチナの法律上、合法的な婚姻許される最低年齢は、それぞれ以前の統治国であったヨルダン、エジプトの法律に倣い、ヨルダン川西岸地区で女性15歳、男性16歳、ガザ地区で女性17歳、男性18歳と定められています。2015年現在のパレスチナの平均婚姻年齢は女性が約20歳、男性が約24歳と上昇傾向にありますが、現在でも高校卒業後の早婚、それに伴う早期妊娠は社会問題の一つとなっています。一夫多妻制は合法ではありますが、フリーダムハウスの報告書「中東における女性の権利」によると、現在はほとんど実践されていません。

※この活動は、ジャマインにおける廃棄物の再利用を通した地域循環型農業モデル形成事業の一環です。地球環境基金の助成と皆さまからのご寄付で実施しています。
(ラマッラ事務所 ヤラ)