PARCIC

パレスチナ

西岸地区 生ごみ堆肥化、地域の循環づくり[1]

ジャマインでの環境保全事業

パルシックは2016年6月より、ヨルダン川西岸地区ナブルス県のジャマイン町で地域の農家組合、女性協同組合、および2つの公立中学校とともに、学校・家庭での環境教育と生ごみを再利用した有機堆肥づくりを通した循環型社会啓発活動に取り組んでいます。

ジャマイン町では日々、1.5エーカー(約1,224坪)ほどの空地にゴミが集積・投棄されています。ジャマイン町にはゴミ処理施設はなく、隣県ジェニンの設備の整ったごみ処理施設に輸送する必要がありますが、イスラエルの占領政策の下での移動には制限があります。また町役場も専用のごみ収集車を所有していないため、きちんとした形での回収・輸送が難しくなっています。パレスチナ西岸地区には設備の整ったごみ処理施設は3か所しかなく、ジャマイン町と同じような状況にある町や村は少なくありません。

この状況を改善すべく、パルシックでは生ごみから有機堆肥を作ることを通して、集積場に投棄されるごみを減量するモデルづくりを目指しています。生ごみは、当該地域で投棄されるごみの約85%を占めるため、ごみの減量の鍵となっています。また、占領下で物の移動が制限されている中、限られた資源の市域内での有効活用し、自分自身で肥料をつくるという意味でも大きな意味を持ちます。

ジャマインのごみ集積場。あらゆるごみが一緒くたに投棄されている。

ジャマインのごみ集積場。あらゆるごみが一緒くたに投棄されている。

事業1~2年目、オリーブの搾りかすを活用した有機たい肥作りに挑戦

事業1年目の2016年はまず、有機ごみの再利用ついて理解を深めるため、山形県長井市で循環型社会づくりの市民運動を立ち上げた菅野芳秀さんを招へいして、循環型社会づくりのワークショップを実施し、地域の有機ごみの堆肥作りへの活用についてアドバイスを受けました。その中で菅野さんが堆肥の材料として、生ごみと並んで活用できると注目したのが、オリーブの搾りかすでした。オリーブオイルの生産が盛んなジャマイン町では、秋のオリーブ収穫期には、オリーブオイルを搾油した後の搾りかすが大量に出ます。オリーブの搾りかすは冬場のストーブの燃料として使われる以外、これまであまり活用されてきませんでした。菅野さんからのアドバイスを受け、オリーブの搾りかすも取り入れた有機堆肥づくり、それを用いた家庭菜園での栽培活動を行いました。

中学校の生徒に土を介した有機物の循環について語る菅野さん

中学生に土を介した有機物の循環について語る菅野さん

女性組合との堆肥づくりの様子。

女性組合との堆肥づくりの様子

事業2年目になる今年は、将来的に1年を通してより大きな規模で堆肥作りを行えるよう、簡易堆肥舎を建て、50軒の家庭から回収した生ごみで堆肥を作るという、生ごみ堆肥化の仕組みづくりに取り組んでいます。

橋本さんの技術指導研修

筆者は2016年の日本帰国時に、日本の国内外で生ごみ堆肥化の技術支援を行い、自身も生ごみたい肥を利用した有機農業を営んでいる橋本力男さんを訪問し、指導を受けました。

生ごみから良い堆肥を作るための一番のポイントは、地域のそれぞれの家庭から集めてくる生ごみを「腐らせない」こと。橋本さんは生ごみを「腐らせない」方法として、「生ごみの一次処理」を開発されました。「生ごみの一次処理」では、もみ殻や米ぬかなどの地域で産出される廃棄物を配合して発酵副資材(床材)を作り、家庭で発生する生ごみと一緒に保管用バケツに投入します。この床材が生ごみから出る水分を吸収し、さらには生ごみの発酵を促進させるため、腐敗を防ぐことができます。発酵するということは、微生物が生ごみを分解し、有用な成分に作り替えてくれるということ。これにより、回収するまでの間、生ごみを家庭で長期間保管することができます。

この橋本さん方式を取り入れ、7月から試験的な床材づくりをはじめ、8月に家庭での生ごみ一次処理、また一時処理した生ごみを回収し、生ごみ堆肥の仕込み行いました。そして9月、橋本さんに実際に現地に来ていただき、直接ご指導をいただきました。

床材づくり

まずは、床材づくり。床材の材料は今後地域で無理なく持続的に生産できるよう、現地で容易に手に入るものを使います。

7月からの床材づくりでは、橋本さんに日本からメールでアドバイスをいただき、それをもとに農家組合の7名が中心になって、オリーブの搾りかすを主材料に、鶏ふん、コーヒーかす、落ち葉、オリーブ畑の赤土を混ぜ合わせ、試行錯誤で作ってきました。

床材づくりを行う農家組合メンバー

床材づくりを行う農家組合メンバー

そして9月。現場にきてくださった橋本さんに農家組合のメンバーが直接手ほどきを受けて一緒に作業。本当は3m3くらいの大容量の仕込み作業をしたかったのですが、主材料のオリーブの搾りかすの量が足りず、少量での仕込みになりました。オリーブの搾りかすは通常10~11月に発生しますが、昨年のオリーブ収穫から1年が経つこの時期、暖房の燃料として各家庭に備蓄されていたものも底をついていました。

床材づくりでオリーブの搾りかすを投入

床材づくりでオリーブの搾りかすを投入

「材料の容積をきちんと計ること」、「材料は比重の軽いものから順に投入すること」、「水分量は40%に」など、橋本さんが1つ1つポイントを確認します。農家組合のメンバーが「これまで3回も仕込んだからもうやり方は分かっている。大丈夫」と言うのに対し、「床材は生ごみ堆肥作りの肝。床材の質が出来上がる堆肥の質を決める。だから配合比率や水分量など、いつも基本に忠実にね。」と優しく念を押しました。

また、よりよい床材にするため「主材料のオリーブの搾りかすは比重が重いので、一部を比重の軽い木のチップなどに置き換えてはどうか」という提案もいただきました。比重が重いと運搬の際に扱いにくいだけでなく、最終的な堆肥になったときに土壌の負担にもなるとのことでした。次回、床材を仕込むときにはオリーブの剪定枝のチップを混ぜ込もうと話し合いました。

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(パレスチナ事務所 廣本)

※この事業は地球環境基金の助成および皆さまからのご支援によって実施しています。