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【ベイルート大規模爆発レポート】#1突如起こった爆発事故。経済危機、コロナ、爆発…。今、我々に何ができるのか。

轟音とともにあがったきのこ雲

それは、8月4日の夕方6時半頃に突然起こりました。7月末から続くロックダウンが2日間だけ解除され、多くの人が海岸沿いを散歩したり、レストランへと出かけたりしていた時間をまるで狙ったかのように、大きな轟音がレバノンの首都ベイルートに響き渡り、地鳴りのように建物が揺れました。慌てて外に飛び出したところ、大きな雲のようなものが上空に見えました。後で広島出身の友人は、これはまるで原爆のきのこ雲のようだと表現していましたが、私は、おそらく、また自爆テロが起きたのだろうと思いました。車がすごい勢いで次々と通りすぎ、大勢の人が通りに飛び出てきては泣き叫ぶのを見ながら、職員同士の安否確認を行い、ひとまず日本人職員3名が無事だということがわかり、ほっとしました。

自宅のある建物の一階。ガラスが吹き飛び、取っ手だけが残された。冬まで扉はないままかもしれない。

何が起こったのか情報が交錯する中、ひとまず外出先から自宅に帰ることにしましたが、路上はいたるところに、ガラスの破片が飛び散り、夏の光を浴びてギラギラと光っている道を踏みしめながら家に帰りました。私の住む建物は、爆心であったベイルートの港から2キロ以上離れていましたが、地上階のガラスの扉は全て吹き飛び、扉の取っ手と破片だけが残っていました。次第に港に放置されていた化学物質が何らかの原因により突如爆発したということ、多数の怪我人と死者が出ていることがわかってきました。

赤と白の煙が立ち上り、この世とは思えないような光景が広がった。

ひたすら、情報収集と安否確認に務めましたが、事件なのか事故なのかわからぬまま、ガラスの掃除をする音や救助を求める声、救急車の音が錯綜する中、一夜が明けました。既に7月後半から新型コロナウィルス感染者が連日100人を超え、どの病院もこれ以上患者を受け入れることができなかった上に、幾千人もの重傷者が病院へと押し寄せ、中には地方都市まで搬送されたケースもありました。8月5日現在、死者は135名以上に上り、怪我人は5,000人以上を超え、爆風により家を失った人は30万人を超えることが判明し、レバノンは非常事態宣言を発しています。

レバノンは、昨年10月に政府に抗議するための大規模ストライキが発生して以来、終焉へと向かってひた走る列車のように、経済危機、異常な物価高騰、物資欠乏、コロナ禍と、世界の中でもこれほどの苦しめられている国があるのかと思うほど、次々と様々なことが起こり、国民は既に耐えられないほどの苦渋を味わっていました。その上に、突如起きたこの爆発で、24キロ平方まで被害が生じたとも言われており、多くの家の窓ガラスが損傷し、人びとが怪我をしたままの状態です。しかし、物価高騰と輸入品の欠如により、既にパンすら買うことも難しい状況の中で、どうやって今後、人びとは新しいガラスを購入し、家を建て直していけばいいのでしょうか。

爆心地に近い車両や建物のガラスなどは、ほぼ吹き飛んだ。

爆発の原因になったのは、港に6年間放置された硝酸アンモニウムであると言われています。そもそも、なぜ起爆性の高い化学物質が2,750トンも港の倉庫に保管されたままになっていたのでしょうか。市民の安全を考えれば、もっと早くに適切な処理をすべきだった。しかし、本当に悲しいことに、レバノンではゴミ問題をはじめとするインフラ整備から市民に対する福利厚生にいたるまで、社会問題が山積し、そのほとんどが何の解決もされないまま、捨て置かれているのが現状なのです。革新的な手法により市民生活を改善できるようなリーダーも、外交手段を駆使して諸国からの支援をもたらすことができるような政治家もいないまま、民衆の不安と絶望だけが募っているのです。新型コロナウィルス対策に関しても、日本では一人あたり10万円ずつの特別定額給付金が拠出されましたが、レバノンではロックダウンの延長だけが数か月にわたって繰り返され、何十万人の失業者と会社倒産が続いているにも関わらず、ほとんど何の対策も支援も行われていないのです。

善意を募る活動が次々と展開されている。

では、人びとはこの状況に対して嘆いているだけなのでしょうか?  SNSを通じて、一般市民の方が「家を失った方へ。私の家には少しのスペースがありますので、しばらくの間お越しください。遠慮せずに心からお待ちしています。」といったメッセージが続々と寄せられ、服や食べ物などの詰め合わせセットを送るための受け入れ先やガラスの破片を清掃するボランティアを募集するページなども活発に稼働し始めています。彼らだけではありません。私たちの提携団体は、事件直後に、今後の緊急支援計画を策定、発表しました。計画では、被災した1,000世帯以上に対して食糧配布、衛生用品配布、医療支援、家宅修復支援、負傷者への心理サポート等を早急に実施することになっています。私たちも、一緒に何か出来ることはないかと考えているところです。

同じ建物に住む友人はいいました。「僕たちは、内戦も多くの事件も、全て生き抜いてきた。今回の惨事なんて、いつものことさ、慣れている、そう思いたい。けれど、今回のは、コロナに経済危機に失業にと、全てに打ちのめされていた中で起こったから、本当に耐えられない気がする。けど、僕たちは、結局のところ、これを全て受け入れて生き抜いていくしかないんだ。そう、こんなことで負けてしまうわけにはいかないんだ。」

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(レバノン事務所 南)

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