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[開催報告]<~知る・繋がる~ミャンマー連続講座>第1回 クーデター後のミャンマーの市民社会:不服従から新しい連邦国家の創設へ

パルシック東京事務局です。2021年11月4日に行われたオンライン連続講座『~知る・繋がる~ミャンマー連続講座』の第1回目の報告をさせていただきます。

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2月にミャンマーで発生した国軍のクーデターについては、日本の皆さんもご存知のことと思います。既にクーデターから約10か月が経っていますが、状況は改善の兆しを見せていません。ミャンマーの市民は、国軍によるクーデターと統治に対し、様々な方法で抵抗の意を示しています。中でも、市民的不服従運動(CDM: Civil Disobedience Movement)という市民や政府関係職員が職務を放棄することで、国軍に抵抗する運動が広がっています。しかしCDMにより、多くの市民が職を失ったり、収入が途絶えることで生活苦に陥っています。

パルシックは現地のNGOらと協働し、CDMに参加したことで経済的な苦境に陥っているヤンゴンで女性らを中心とした市民への生活支援の事業を開始することにしました。まずは日本の皆さんから寄付金を募り、それを資金とした事業を行います。

【ご寄付のお願い】 市民のつながりでミャンマーの人たちに支援の手を!

さらにパルシックは、ミャンマー研究者の方や在日ミャンマー人の方をお招きし、オンライン連続講座『~知る・繋がる~ミャンマー連続講座』を開催し、皆さんとともに学びながら、ミャンマーのために出来ることを考えていきます。

連続講座の第1回目は上智大学の根本敬先生に『クーデター後のミャンマーの市民社会:不服従から新しい連邦国家の創設へ』という題目でお話しいただきました。

当日は200人弱の方にご参加いただき、大変盛況な会となりました。 今回は根本先生の講演のポイントを3つの観点からおさらいしてみたいと思います。 1つ目は『なぜミャンマー国軍は自国民を殺せるのか』、2つ目は『国民統一政府(NUG)の目指すもの』、最後に『スーチー氏以後のミャンマー』です。

1つ目の『なぜミャンマー国軍は自国民を殺せるのか』については、ニュースを見聞きした多くの人が疑問に思ったことではないでしょうか。私も疑問に思っていた点です。 この点について根本先生は、2つの観点から説明します。文民統制を受けない制度の下で育まれた国軍の特権意識と国民と対峙してきた歴史、そして国軍だけで経済的利益を享受出来るようになった国家の制度設計です。

国軍は独立後73年間休むことなく戦い続けており、その主たる敵は国内の少数民族軍、つまり自国民であり、外敵ではないのが特徴です。また、2021年の以前にも2回あったクーデターでも学生や市民を大量に殺害するなど、「現在完了進行形」で国民を殺すことには慣れてしまっている現実があると説明します。

さらに国軍は、国軍だけで食べていける経済利権を作っています。国軍が経営する会社を通じ、10数万人の国軍将校ら個人に株主配当金が入るシステムを構築しており、国軍と軍属の人間が儲かるシステムを築き上げました。その結果、国民の支持は必要ではなく、あくまで力で従わせる対象となっており、場合によっては自国民を殺すことも躊躇しないということです。

2つ目は『国民統一政府(NUG)の目指すもの』についてです。クーデター後、スーチー氏が率いていた国民民主連盟(NLD)の所属議員らは、国軍に対抗するためNUGを設立しました。そのNUGは、「フェデラル民主制」を目指していると根本先生は説明します。フェデラル民主制とは何でしょうか?

ミャンマー連邦共和国の英語での正式名称は「Republic of the Union of Myanmar」です。独立以降、中央政府・国軍は中央に権力を集中させる「The Unionとしての連邦制」を推進してきました。反対に、国民統一政府(NUG)が目指す連邦制は州を基本としてそれが集まって連邦国家を作る「The Federalとしての連邦制」です。故に、NUGが設立した内閣には少数民族出身者を多く含むなどの配慮がなされています。またNUGは国軍の解体をも明言しています。

長年、独立や自治権を主張してきた20以上もある少数民族軍事組織とNUGが連帯できるかは不透明ではあるものの、NUGは少数民族にも配慮を施した政治を運営しようとしています。

最後に『スーチー氏以後のミャンマー』についてです。

根本先生は、今回のクーデター以後、ミャンマー市民はアウンサンスーチー個人崇拝から卒業したと説きます。 スーチー氏は、国軍により軟禁され、どこにいるかも分かりません。そのため、スーチー氏の指示を待たずに、国民が自発的に市民的不服従運動(CDM)を行い、国民統一政府(NUG)を作って連邦国家の体制をも作り変えようと動いています。スーチー氏お任せの政治から、精神的にも物理的にも卒業した「国民の政治的自立」が達成できているということです。

この着眼点については、なかなか他の専門家や記事などではあまり見られないものであり、個人的に非常に興味深く拝聴しました。ミャンマーの国民が政治的に独立し、民主化のために動いていると聞くと、日本の市民として出来ることを自律的に考えて動いていかなければいけないと考えさせられます。

根本先生も講演のまとめで、「国際社会と市民社会が、国軍への的を絞った経済制裁をし、NUGへの連帯を示す方向でいま動かなければ、現状が既成事実化してミャンマーの未来は失われる」と話されていました。 最後に参加者の方からの質問と根本先生の回答をいくつかご紹介します。

Q:スーチー氏以後の世界に入ったと伺いましたが、次のリーダーになるような方はいるのでしょうか?

A:質問に直接お答えすると後継ぎといえるリーダーは出てきていないと言える。他方で、国民民主連盟(NLD)を引き継いだといってもいい国民統一政府(NUG)は集団指導体制であり、NUGがどこまで国民とともに政治をリードしていけるかにかかっている。仮にスーチー氏が政治の世界から外れてしまっても、国民が作り上げたNUGは存続し、一人のリーダーに頼ることなく民主政治は続いていくと思われるし、それをNUGも目指している。

Q:仮にNUGが国軍を打倒できても、ビルマ人中心主義を手放す覚悟がマジョリティのビルマ人は持っているのでしょうか?

A:NUGは少数民族に配慮した内閣を作り、ロヒンギャに謝罪する事を公言するなど多方面で少数民族への配慮を見せている。他方で、NUGを支えるマジョリティのビルマ人がこの政策を支持し続けていくかは、今後も注視していく必要がある。

Q:一般社団法人日本ミャンマー協会は在日ミャンマー人の抗議にも耳を傾けず、軍に資金を流入させていると言われていますが、なぜこの組織がここまで権益を持っているのでしょうか。またこの組織をどうすることがミャンマーにとっていいのでしょうか?

A:2011年に出来た民間の組織だが、軍に資金を流入させているというわけではなく、日本の政府開発援助(ODA)の利益調整団体である。それ故、日本の大手企業が多く参加している。また、与野党の大物政治家や元駐ミャンマー大使が理事で名を連ねており、ミャンマー国軍に制裁などをかけようとする際に、日本政府が動きにくくなる重石として機能してしまっているのが現状である。この問題について、大手メディアはほとんど報じておらず、この日本ミャンマー協会をどうすべきかは、日本人として突き付けられた問題であると考えている。

さらにミャンマーについて知りたい方は、以下の根本先生のご著作を参照ください。

(パルシック東京事務所)