制限の中で育てる緑 ― デイル・バルート村での植樹活動(2)
- 活動レポート
- 西岸地区での植樹を通した環境保全・緑化事業
- パレスチナ
- 経済自立支援事業
パルシックは2016年から現在まで、ヨルダン川西岸地区で植樹活動を続けています。地域の人びととともに木を植えて、緑を増やしてきました。その背景には、イスラエルによる入植地の拡大や土地の接収が続くなかで、パレスチナの人びとの土地と生活を守りたいという思いがあります。
今年で10回目となる植樹活動では、2026年1月にセルフィート県デイル・バルート村で、村の診療所前の空き地での植樹と、学校でのハーブ植栽を行いました。さらに6月には日本の皆さんからご寄付をいただき、糸杉、ハイビスカス、バラ、ヤシなど約100本を追加で植えました。植えた木々は、村の人びとが水やりや草取りを続け、順調に育っています。診療所の工事が終われば、この場所は村人が自由に使える公園として開放される予定です。

6月に公園へ追加の木を植えました(中央がダウードさんとアリーンさん)
6月の植樹に娘と参加したダウードさんの声
1月の植樹会には参加できなかったので、今日は娘のアリーンと公園づくりに参加できてよかったです。この村では、ファクース(表面にうぶ毛の生えたキュウリのような野菜)が主な作物の一つです。もちろんオリーブも、私たちの暮らしを支える大切な作物です。しかし、イスラエル兵士や入植者によって、私たちは自分たちの土地にさえ自由に立ち入れないことも多く、毎年、オリーブを収穫できるかどうかも分かりません。それでも、私たちにはあきらめるという選択肢はありません。私には4人の子どもがいます。村には、子どもたちが安全に遊べる場所があまりありません。以前はナブルスやラマッラといった近隣の都市に連れて行くこともありましたが、検問所や道路封鎖が増え、これも難しくなりました。子どもたちが安心して遊び、のびのび過ごせる公園になることを願っています。

収穫期になると、村の道路沿いで農家がファクースを販売します
今年の植樹事業は、村の女性農業組合が活躍してくれました。農業経験豊かなメンバーが、診療所前の植樹会や学校でのハーブ植栽に熱心に取り組み、自分たちの畑にも果樹を植えました。この村の女性たちが発揮するリーダーシップは、周辺の地域の人びとにも知られています。2023年10月以前は、デイル・バルート村では男性の多くが、イスラエルとパレスチナ自治区を隔てる境界線のグリーンラインを越えてイスラエル側で働いていました。その間、農業を担い、土地と家族を守ってきたのは女性たち、という背景があります。

女性農業組合が作るトマトのピクルス(左)とファクースのピクルス(右)
女性農業組合のイブティサーンさんの声
私は2016年に組合ができた時からのメンバーです。組合では野菜やオリーブの栽培をしたり、ピクルスやマフトゥール(大粒のクスクスのような伝統食品)などの加工食品作りをしたりしています。養鶏にも取り組んでいましたが、養鶏場はイスラエル軍の命令により破壊され、現在は中断しています。私は8年間、村議会議員も務めていました。今は組合のリーダーが議員を務めています。女性農業組合の活動は暮らしを支えるだけでなく、村の意思決定に女性の声を届ける力となっています。今回植樹した場所は、母親たちも子どもを見守りながら集まり、おしゃべりをしたり、子育てについて相談したりできる公園にしていきたいです。

女性農業組合のイブティサーンさん
2025年1月以降、西岸地区では、軍事作戦、建物破壊、入植者による暴力によって、家や村を追われた人びとは4万人を超えています(2026年7月末時点)。公園づくりを進める間も、状況は悪化し続けています。2026年1月から7月末までの間だけでも、入植者による攻撃で負傷したパレスチナ人は900人を超え、2,300人以上が家を追われています。
村長のサミールさんによると、村の面積はもともと3,600ヘクタールでしたが、1967年以降、イスラエル軍による軍用地や入植地・分離壁の建設のために、約3分の2の土地が接収され、利用できなくなりました。また、残された約3分の1の土地の大半も、村人が自由に使うことができません。木を植え続けても、土地への立ち入り制限や接収の危険がなくなるわけではないのです。それでも、村の人びとにとって、土地を耕し、苗木を育て、農業を続けることは、困難な状況のなかでも未来への希望をつなぐ心の支えとなっています。
パルシックは、これからも植樹活動を通じて、パレスチナの人びとの暮らしと未来を支えていきます。
(パレスチナ事務所)
この事業は、(公社)国土緑化推進機構「緑の募金」の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。
