ガザ、テント横で希望の芽を育てる家庭菜園活動
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パルシックは2023年10月に始まった戦争以前から、ガザ地区の小規模羊農家70世帯を対象に、羊の飼育を通した生計向上支援を行ってきました。同時に、参加農家の女性70人を対象に、心のケアや栄養改善につながる研修も実施してきました。開戦以降、参加者の安全を確保することが難しくなり、同研修は一時中断していましたが、2025年10月の停戦を機に再開しました。
停戦以降も、ガザへの食料搬入は十分とはいえず、新鮮な野菜を手に入れることは容易ではありません。そこで2026年4月には、パルシックの農業専門家が講師となり、テント横の限られたスペースでも野菜栽培に取り組めるよう、家庭菜園研修を実施しました。農業専門家の報告と参加者の声をご紹介いたします。

パルシックの農業専門家による、女性70人を対象とした家庭菜園研修の様子
ガザスタッフ(農業専門家)からのレポート
今回の家庭菜園研修は、女性たちが新鮮な野菜を収穫できるようにし、さらには戦争前の日常のかけらを取り戻すことで、少しでも心の癒しにつながるようにとの思いで実施しました。研修では、農業や家庭菜園の基本に加え、野菜の種類に応じた種まきの間隔や水やり、害虫対策など、実践に役立つ内容にしました。女性たちの中には、戦争前に自宅で家庭菜園をしていた人も多く、当時を思い出して涙する人もいました。研修の終わりに、参加者に野菜の種などを配付しました。女性たちは、これから自分たちで野菜を育てられることを、とても喜んでいました。

配付した野菜の種(ルッコラ、 ディル、ほうれん草、スイスチャード、パセリ、 ラディッシュ、 モロヘイヤ、ササゲ豆など)を実際に見て種の違いを確認する様子。
研修から2週間後、私は女性たちのテントを訪問しました。そのうちの一人、インジュードさんは、テント横の限られた土地を耕して種をまいていました。菜園ではすでに小さな芽が出始めており、彼女は笑顔でその芽を見せてくれました。子どもたちも水やりなどを手伝っているようです。
また、別の参加女性からは、「私たちと子どもたちのために”命の種”をくださり、本当にありがとうございます」という声も届いています。

戦争以前から参加女性をまとめる女性リーダーのヌジュドさん。羊の飼育を続ける傍ら家庭菜園も始めました。

家庭菜園に参加した奥さんと一緒に野菜の栽培を始めた農家
ガザの復興には何十年もかかると言われており、女性たちは途方に暮れる日々を過ごしています。しかし家庭菜園を始めたことで、「支援を待つだけではなくて、自分たちでもできることがある」という感覚を少しずつ取り戻しています。また、「家庭菜園を通して、モノクロだった避難生活に少しずつ色が生まれ始めているように感じる」という声も届いています。
家庭菜園は、単に野菜を育てるためだけのものではありません。食料不足が日常となっているガザで、自分たちで食べ物を育てることは、生き抜くための手段です。それは、2年半続いた圧倒的な破壊を前に、それでも生きる権利と尊厳を守るための「無力感に抗う小さな営み」でもあります。テントのそばのわずかな土地に種をまき、希望とともに水をやる時間は、避難生活の中で日常の一部を取り戻す支えにもなっています。
ドアーさん
研修を受けた後、私たちはルッコラ、モロヘイヤ、ラディッシュなどを植えました。一部の種は、次の栽培時期のために残しています。植えた野菜の多くは、順調に育っています。子どもたちと一緒に土に触れ、種をまく時間は、困難な日々のなかで失っていた喜びを思い出させてくれました。子どもたちにとっても、厳しい避難生活のなかで楽しみながら学ぶ、前向きな体験になりました。植物を育てることは、かつての私たちの暮らしの一部でした。水やりに使う水を確保することも簡単ではありませんが、元気に育つよう、心を込めて大変な水やり作業も続けていきます。ルッコラはすでに収穫して食べることができました。ほかの野菜も収穫し、自分たちで育てた野菜で家族の食事を作ることを楽しみにしています。テントのそばにあるこの小さな菜園は、ただ食べものを育てるだけの場所ではありません。毎朝、コーヒーを手に、鶏や植物の前に座り、穏やかな景色を眺めていると、心が落ち着きます。これからも栽培を続けていきたいと思っています。家庭菜園を通して、家族で協力しながら過ごす時間が生まれ、家族の絆を深めるとともに、戦争前の暮らしを少しずつ取り戻せているように感じます。

野菜が発芽して育っているのを楽しみに毎日水やりする子どもたち
参加した女性たちにとって、家庭菜園は土地とともに暮らしてきた自分たちの生活や誇りを思い出す瞬間でもあります。毎日水を撒いて、野菜の成長を楽しみに観察することで心が少し安らかに感じると女性たちは口を揃えます。パルシックは引き続き、女性たちが自分たちの手で暮らしを支える力を取り戻していけるよう、研修を続けていきます。
(パレスチナ事務所)
*この事業は日本NGO連携無償資金協力の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。
