- シリア・レバノン・トルコ
- 復興支援事業
2011年から続いた紛争の影響で、人びとの苦しい生活が続くシリアで食糧生産支援をしています
プロジェクト背景
2011年に始まったシリア内戦は14年にも渡り続き、シリアでは1,400万人以上の人びとが故郷を追われ、国内外での避難生活を余儀なくされてきましたが、2024年12月、アサド政権が崩壊し、シリアは新たな局面を迎えました。
内戦は終結したものの、2025年6月時点で、人口の62%にあたる約1,650万人もの人びとが引き続き人道支援を必要としています。人びとは必要最低限の生活さえ送ることができない状況が続いていますが、国際社会からの支援は十分とは言えず、2025年6月18日時点で、シリアへの人道支援拠出金は必要とされる資金のわずか14.6%にとどまっています。
また、2024年12月以降、200万人を超える人びとがシリアに帰還しましたが、帰還しても仕事や住む家がなく生活のめどが立たず、再び避難先に戻る人も少なくありません。依然として国内外で避難生活を送る人びともいます。
さらに、シリアは気候変動の影響を顕著に受けており、歴史的な干ばつに襲われています。2024年11月から2025年4月にかけての降水量は、例年の約半分にまで落ち込みました。かつて農業国として知られていたシリアですが、長引く紛争による農地の荒廃、そして干ばつが重なり、食糧不安は一層深刻化しています。
プロジェクト内容
パルシックは、2019年から、シリア国内で暮らす国内避難民や脆弱な帰還民、地域コミュニティの暮らしを支える活動を行っています。
毎日の食事にも困る農家に対して食糧配付を行うことから活動を開始し、シリアの主要な農産品であるオリーブを生産する農家への支援も行いました。その後は、内戦の影響や経済的な理由で農業を再開できない農家への支援として、種、肥料、農薬などの農業資材を提供し、農業研修を行い、1年間伴走することにより作物の収穫を確実なものとし、パルシックの事業終了後にも自らの力で農業を継続できるよう支援を行っています。幸運なことに、わたしたちの事業に参加した農家はすべて、農業を継続することができています。
また、農業での生計手段を持たない方には、食品加工支援、家畜飼育支援、小規模ビジネス起業支援を行ってきました。特に2023年以降は小規模ビジネス起業支援に力を入れています。シリアの中でも農村は、内戦の影響によって、生活雑貨・日用品店、理髪店、衣料品店、修理店などが廃業してしまいました。そのような村で、人びとの日常生活で必要なモノやサービスを提供できるよう、また同時に、生計手段を持たない人びとが小規模ビジネスで暮らしを立て直せるよう、活動を行っています。
私たちの最終的なゴールは、シリアの人びとが自らの手で暮らしを切り開いていくことができるようになることです。農業や小規模ビジネス支援などの活動を通して、人びとの生活が安定し、シリアが再び農業国として復興し、経済活動が軌道に乗る日を願いながら、私たちは活動しています。
この事業は、ジャパン・プラットフォームの助成および皆さまからのご寄付により実施しています。
現地からの声
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農業事業に参加するホムス県のモハマドさん
モハマドさんは家族の計7人をひとりで養っています。シリア内戦が始まるまで、約40年間農業一筋でやってきましたが、紛争で住んでいた町が攻撃を受けたため、一時的に他の地域に避難しました。攻撃が落ち着いた後に家に戻ると、農機具は壊されたり盗まれたりしていました。その後、借金をして種や肥料を購入して農業を再開しましたが、数年前に腰を悪くしてからは、治療費の支出が重なり、借金の返済が滞るようになっていました。しかし、パルシックの農業事業に、妻のハナさんと一緒に参加してからは、野菜の収穫を楽しみにしながら精力的に活動を行っています。収穫時には「収穫野菜の一部を販売することで、病気の治療費だけでなく、大学に通っている子どもが卒業するまでの学費も支払える目途が立ちました」と、とても喜んでいました。
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ホムス県で小麦を収穫した農家さんたちから
新型コロナウイルスの感染が拡大する前は、なんとか作付面積を縮小したり、安い種や肥料を購入したりして農業を継続していた農家も、感染がシリア国内で拡大し始めると、マスクや衛生用品の購入が家計の大きな負担となり、農業の継続が難しく、止めようと思っていたという声を多く聞きました。今回の支援により、農業の継続ができて感謝しているとの声をいただきました。それぞれの家庭の子ども達も、農業の収入が減ると食費にも影響があり、家庭での食糧事情が厳しくなることを経験してきているため、子どもたちも収穫の際は一緒になってうれしそうに収穫を手伝っていました。