シリア北西部の国内避難民に支援物資を届けました
- 活動レポート
- シリア国内避難民・帰還民の生活再建支援
- シリア・レバノン・トルコ
- 経済自立支援事業
昨年12月8日、シリアでは14年近く続いた内戦が終結し、半世紀以上にわたって続いたアサド独裁政権が崩壊しました。今年3月には暫定憲法が制定され、移行政府も発足し、国の再建に向けた動きが休む間もなく進んでいます。
シリアでは、内戦が始まった2011年以降、国内人口の6割以上にあたる1,400万人近くが国内外に避難をしたと言われていますが、独裁政権崩壊により、人びとの間で自由と希望の機運が高まりました。
その一方で、帰還先での暮らしの再建や出身地への帰還が難しい世帯が多いというのが現状です。長年の内戦により公共インフラや学校・病院などは損壊し、仕事や住む家がなく生活再建のめどが立たず、治安も不安定なため、多くの世帯がいまだに避難生活を送っています。現在も国内では700万人以上が避難中とされ、その半数以上が北部地域の避難民キャンプなどで生活をしています。
パルシックは、今年3月から5月にかけて、国内避難民が最も多い、北西部イドリブ県とアレッポ県の避難民キャンプで現在も避難生活を送る7,000世帯に食料バスケットの配付を行いました。この地域は、インフレや燃料価格の高騰により地域全体で食料へのアクセスが低下し、さらに1月のアメリカUSAIDの援助停止により、国内避難民への人道物資支援に影響が出ていたことから早急な対応が必要とされていました。

イドリブ県郊外アル・マグサラ・キャンプでの配付の様子
配付は、トルコ国境に近い北西部地域、県内でも特に避難民が集中している、マーレット・タムスリン、ダーナ、アタレブ準郡内の避難民キャンプ40ヶ所で行いました。避難民キャンプは、200人ほどが住む比較的小さなキャンプから、2,000人近くが住む大規模なキャンプなど様々です。

配付した食料バスケットの中身
郊外の農地やオリーブ畑周辺などの小規模なキャンプではテントが多く見られる一方で、数百世帯以上が暮らす大規模なキャンプでは、コンクリートブロックの壁にビニールシートの屋根をかけた住居や、コンクリートとテントを組み合わせた住居が主流です。

テント世帯の多いラビー・マイスルナ・キャンプ

イドリブ県キリの避難民キャンプ。コンクリートブロックをビニールシートの屋根で覆っている
今回の活動地域の避難民の多くは、旧戦線であるイドリブ県南部やハマー県北部から逃れてきた人びとで、帰還先の家は内戦により損壊・破壊されていることがほとんどです。そのため、多くの世帯が帰還の際にはテントだけでなく、ビニールシートの屋根や窓なども解体して持ち帰り、自宅の再建に再利用しています。

破壊されてしまった帰還先の家
厳しい状況の中でも、現場で共通して聞かれるのが、将来を描けるようになったことへの希望です。尊厳を持って生活ができるようになった、子どもたちには戦争のない人生を送ってほしいといった声も多く聞かれました。
国の復興再建への道のりは長いですが、現地の人びととともに一歩ずつ先に進められるよう活動をしていきます。
(レバノン事務所 土橋弘)
*この事業は、ジャパン・プラットフォームの助成および皆さまからのご寄付により実施しています。