西岸地区:緑を守り希望を育てる、イジェンシニヤ村での植樹イベント
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- 西岸地区での植樹を通した環境保全・緑化事業
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パルシックは地域の人たちと一緒に緑を増やすとともに、イスラエルによる土地の不法な接収を防ぐことを目的に、2016年から毎年、ヨルダン川西岸地区の各地で植樹イベントを続けています。
西岸では、イスラエルによる軍事占領と違法入植地の拡大によって、人びとの暮らしが日々脅かされています(最近の西岸の様子はこちらをお読みください)。
特に農村部では、村と都市を隔てる検問所やゲートの影響で、日々の移動が困難でかつ危険なものになっています。そんな中、子どもたちや家族が安心して過ごせる公園や、地域の人びとが自由に集える緑地といった公共の場が限られています。「それなら、自分たちの村に自分たちの手で緑を植えよう」という、地域の人びとの前向きで力強い思いを受けて、パルシックはこの植樹活動を続けてきました。
9回目となる今年の事業は、ナブルス県イジェンシニヤ村で行いました。村役場と協力し、もともと空き地だった村の共有地を、地域の人びとの憩いの場となる緑地に整備する準備を進めました。6月に開催した植樹イベントでは、30名の村人が参加して、イナゴマメ(※)、ピスタチオなどの果樹、土の保水や日陰づくりに役立つアカシアやジャカランダなどの苗木を丁寧に植えました。苗がうまく育つように使用した肥料は、隣村の北アシーラ村でパルシックが実施している循環型社会作り事業の一環で作られている有機堆肥です。今回のイベントには、ナブルス県の農業省の職員も参加し、他の地域にもこうした取り組みを広げられないかと、熱心に見学していました。

オリーブ農家が多い地域なので、参加者は慣れた手つきで、苗木を丁寧に植えていました

隣村で作られている有機堆肥を、苗を植える前に土に混ぜました
西岸での植樹活動は、単なる環境保護にとどまりません。これは、土地の収奪や移動の自由の制限など、占領下にあるパレスチナの人びとの、静かだけれど力強い抵抗であり、そこに根を張り、暮らし続ける「スムード(アラビア語で「不屈」という意味)」の象徴でもあります。

おじいちゃんと一緒に参加したイッゼくん。初めて植樹をしたとのことで、「どんな木に育つのか楽しみだし、他の種類の木も植えてみたい」と、植樹作業が楽しかったようです
当日は、若者から高齢者まで幅広い世代が参加してくれました。多くの方が「また参加したい」と話してくれたことが、とても印象的でした。2023年10月以降、西岸の状況も急激に悪化するなかで、人びとは常に息苦しさを感じています。そんな中、ひとときでも地域の人が集い、体を動かしながら「自分たちの手で希望を育てることができる」と実感できる時間になったのではないかと思っています。
どれだけ厳しい状況にあっても、人びとはアイディアと行動によって希望の芽を育てています。今回の植樹活動も、その確かな一歩になったと信じています。

最後に参加者で記念撮影をしました
※イナゴマメは、中東や地中海地域で古くから育てられているマメ科の樹木で、乾燥に強く、食用や飼料、緑化など様々な目的に使われます。英語では「カロブ(carob)」とも呼ばれ、最近はチョコレートの代替品としてなど、スーパーフードとして注目を集めています。
(パレスチナ事務所)
*この事業は、国土緑化推進機構緑の募金の助成および皆さまからのご寄付により実施しています。