特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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[開催報告]<~知る・繋がる~ミャンマー連続講座> 第2回平和と人権:ミャンマーの状況

  • 活動レポート

パルシック東京事務所です。2021年12月9日に行われたオンライン連続講座『~知る・繋がる~ミャンマー連続講座』の第2回目の報告をさせていただきます。

Parcic YouTubeチャンネルでアーカイブも公開しています!ぜひ、ご覧ください。

2月にミャンマーで発生した国軍のクーデターについては、日本の皆さんもご存知のことと思います。既にクーデターから約11か月が経っていますが、状況は改善の兆しを見せていません。ミャンマーの市民は、国軍によるクーデターと統治に対し、様々な方法で抵抗の意を示しています。中でも、市民的不服従運動(CDM: Civil Disobedience Movement)という市民や政府関係職員が職務を放棄する事で、国軍に抵抗する運動が広がっています。

しかしCDMにより、多くの市民が職を失ったり、収入が途絶えることで生活苦に陥っています。パルシックは現地のNGOらと協働し、CDMに参加したことで経済的な苦境に陥っているヤンゴンやその他の地域で女性らを中心とした市民への生活支援の事業を開始することにしました。まずは日本の皆さんから寄付金を募り、それを資金とした事業を行います。

さらにパルシックは、ミャンマー研究者の方や在日ミャンマー人の方をお招きし、オンライン連続講座『~知る・繋がる~ミャンマー連続講座』を開催し、皆さんとともに学びながら、ミャンマーのために出来ることを考えていきます。

連続講座第2回目となる今回は、在日ミャンマー人のレーレールィンさんに「平和と人権:ミャンマーの状況」とのタイトルでお話しいただきました。

レーさんは2月の国軍によるクーデターが発生した後に、友人らと協働して東京・池袋にミャンマー料理を提供するSpring Revolution Restaurantを開店しました。同店での売り上げは、必要経費を除き、市民不服従運動(CDM:Civil Disobedience Movement)に参加して長期的な失業状態になっている市民や、国内避難民となっている市民の生活に役立ててもらおうとミャンマーに送金されています。

レーさんは東京で看護師として勤務し、日本人の指導役もこなしています。そんな多忙な中でも、レストランの運営や、様々な媒体やイベントに積極的に出演してミャンマーの現状を伝え続けています。寝る間も惜しむ程の多忙の中、2月以降これらの活動を続けてきました。

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何故そこまで日本からの活動を精力的にこなしていけるのでしょうか? その理由はレーさんのお話の中で言及された「平和と人権という問題はミャンマーだけの問題ではなく世界の問題でもある」という言葉に象徴されるのではないでしょうか。

在日ミャンマー人は若い世代を中心に、今回のクーデターと国軍の統治に反対する活動を日本各地で行っています。レーさんはその活動の中心となっています。 レーさん達の世代は短期間であるものの民主主義を経験しています。2011年に民政移管したミャンマー社会はクーデター以降180度変わってしまいました。だからこそ、彼らは民主主義を強く希求し、日本からも声を挙げています。

レーさんも、「学生の時に成績が良かったにも関わらず、希望の道に進めなかった。それは軍政のため、軍関係者の子息が優先的に希望する大学に入れるためで、希望の道に進めず自殺を考えるほど思い悩んだ」と語っています。軍事政権時代と民主主義政権の両方を経験しているからこその思いを感じます。

また、レーさんのお話からは、在日ミャンマー人の声として、日本政府や国連などの国際機関への失望も聞かれました。 レーさんは「世界からの支援を待っていたが、もう諦めた。自分たちで民主主義を勝ち取っていかなければいけないと意識が変わっている」と話します。 日本も在日ミャンマー人から、国軍を助ける様な対外関係を変える様に抗議を受けましたが、大きな動きを見せず、中には国軍を擁護する政治家もいる程です。 そんな現実に、在日ミャンマー人は若い世代を中心に自分たちで立ち上がることを決意しました。

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レーさん自身の経験からも、「独裁の軍政に戻ってしまえば、若い世代の未来は奪われる。自らの手で、自由のある未来を掴み取るまで闘う」との強い言葉で、彼女達の決意を示していました。 レーさんのお話では、在日ミャンマー人の方々の活動に加えて、ミャンマーにいるご友人や知人の話もしていただきました。

レーさんの友人や知人なども、その家族や知り合いなどがCDMなどに参加したため国軍や警察に殺されたり捕まったりされた方が多くいます。 そのため、多くの人が首都地域から地方の少数民族地域まで逃れて、少数民族の軍事組織や民主派が設立した人民防衛隊(PDF)に入りながら、軍事訓練を受けるなど様々な活動に従事しています。

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以下の写真はレーさんのご友人で、大学4年間同じ部屋で過ごし、一緒に寝食と勉強をともにしてきた方です。元々は看護大学の教師をされていました。しかし、デモやCDMに参加して身の危険を感じたため、地方に逃れて、そこで病人や怪我人の手当てなどをする役割を果たしています。食料を確保するため山で竹の子を探すなど、地方での暮らしは苦労している様子が伺えます。

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もう1人のレーさんのご友人は、国際病院の師長として勤務していましたが、同じくデモに参加した後に、地方に逃れました。6月までは連絡が取れていましたが、講座のあった12月時点では連絡が取れず、生きているのかも分からない状態と話されていました。 (その後、幸いにもレーさんが友人達とは連絡が取れ、写真も掲載して欲しいとの意向も本人からレーさん経由で伺えました)

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彼女達が参加している民主派組織のPDFはレーさんによると下記の図の赤い部分の様に北西部を中心に活動しており、この地域を中心の活動地域にしながら国軍と対峙しています。

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レーさんは、「PDFはレーさんの友人達の様な優秀な正義感のある若者達を中心に構成されている。テロリストを支援する様な事ではないので、その点を理解して欲しい」とお話しされました。

次にレーさんの活動を推し進める源は何であるかをご紹介したいと思います。 レーさんは、こう語りました。 「行きたいところに(自由に)行って、食べたい時に食べて、寝たい時に寝れる、そういった事は平和だからこそ出来る。日本にいるとそれはあまり意識しないかもしれないが、それは当たり前ではない。ミャンマーでは、以前からも首都圏と地方で貧富の格差などが激しく、平和は当たり前ではない事を実感してきた。その平和の大切さを日本の方には自ら意識するとともに発信もして欲しい」。

また、「今回の問題はミャンマーだけの問題でなく、世界中に影響を及ぼす問題である。何故なら、世界中の独裁者が今回のミャンマーを注視しており、今世界が沈黙する事は、世界の平和や人権に対する責任の沈黙と同義である。世界が沈黙すれば世界がその方向に進んでしまう」と強いメッセージを語りかけていました。

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そして、「私たちはスーチー氏のためであったり(スーチー氏が党首である)国民民主連盟(NLD)を政権に就かせたかったりするためではない。国軍(の統治)に反対し、民主主義を守るために戦っているのだ」と説明しました。 この言葉からも、連続講座第1回の根本敬先生の「スーチー氏お任せの政治からの脱却」が感じられました。

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そして日本の方に向けて、「ミャンマーで起こっている事を周りの人に伝えてください。そして、日本政府がビジネスなどを通じて国軍へのサポートをしない様に、また、日本政府が、国民統一政府(NUG)への支持を行う様に日本の方々にも声をあげて欲しい」と語りかけました。 レーさんは、「日本が平和であり続けるためにも、世界が平和な場所であるためにも、身の回りから平和を意識し、平和を守る活動を始め、家族、町、国、世界と平和な社会が広まるために自身でできる事を頑張って欲しい」との言葉で講座を締めました。

以下では、当日に寄せられた質問とレーさんのご回答を紹介します。

Q:人民防衛隊(PDF)の勢力範囲が広がる可能性はあるのか?またどの様にPDFを支援出来るか?

A:PDFの勢力範囲は拡大傾向にあるが、国軍も残虐な行為でそれを止めにかかっており、なかなか難しい状況である。そのため皆さんからの支援が必要です。国民統一政府(NUG)に支援を行えば、PDFにも支援はいくし、様々な日本の支援団体を通じてPDFに直接支援を届けることも可能です。

Q:PDFへの支援となるとどうしても軍事的な活動への支援になってしまう気がして、敬遠する人もいると思うが、軍事的な活動でない使途に制限された支援は出来るか?

A:市民的不服従運動(CDM)や国内避難民となっている市民への食料配布などと言った使途を限った支援活動をしている団体で、NUGから公認されている団体も日本にはあるので、それらの団体を通じた寄付で、使途を制限した支援は可能です。

Q:様々な団体が独自に支援活動をやっている様な印象があるが、それらが協働していく方向性はあるのだろうか?

A:日本国内でもネットワーク組織を作り、情報共有なども行っているし、CDMへの支援ではNUGから認可された世界中の支援団体と繋がって情報共有と活動の共有なども行っています。

(パルシック東京事務所)

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