特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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ガザスタッフからの声(12/20-12/24)

  • コラム

1225日、パルシックは年内停戦を求めるNGO、人道支援団体、研究者、医療従事者、宗教者等と共同記者会見を実施しました。戦争開始から80日が経過し、ガザ地区全域における未曾有の危機がさらに深刻化しています。

12月に入り、タグリードの19歳になる次女が「どうかクリスマスまでに停戦になってほしい。もし停戦できたら私たちへのクリスマスプレゼントだね」と切実な願いを私に伝えてくれていました。しかし停戦どころか、次女の住む中部のヌセイラットはイスラエル軍による地上戦や空爆が激化しています。イスラエルは住民に退避勧告を発令していますが、この退避勧告は、一般市民を攻撃対象にはしていないと国際社会に示すための建前に過ぎず、ガザ全市民に対する無差別な大規模攻撃は、クリスマス当日も激しさを増すばかりでした。

大人にとっても限界を超えている過酷な状況は、より脆弱な子どもたちから気力も体力も奪い取り、ストレスに対して正直な子どもたちの体は悲鳴をあげています。24日に約1か月ぶりに連絡が取れたマフムードは、幼い子ども3人と共にUNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業機関)の学校で避難生活を続けてきました。水も食料も十分ではないなかで、数千人が密集して生活している学校の衛生環境は非常に悪く、病気が蔓延し、マフムードの子どもたちも全員体調不良を起こしています。しかし、薬も不足しており、ただ停戦を待ち望んで耐え続けるしかありません。シャディの子ども3人も体調を崩していました。約3週間前に一家でハンユニス県からラファ県に避難をして以降、特に2歳半の次男の心身には明らかに異変が起きています。

シャディから

次男はもともとよく話しスマートで社交的な子どもでした。26か月ですが、おじいちゃんやおじさんともよく会話をしていました。しかし、ラファ県に退避して以降、明らかに様子が変わりました。空爆だけでなく、どんな音も聞きたくないと耳をふさぎ続け、夜中に恐怖で叫び続けます。夜から朝にかけて空爆が激しく続くからです。私や妻が抱きしめると、そこから離れることを嫌がります。私が移動することも怖がります。また上手く話すことができなくなり、吃音が目立つようになりました。とても心配です。

シャディは次男が感じる恐怖を少しでも緩和しようと、物語の読み聞かせやリラックスできる音楽を流したり、おもちゃやキャンディをあげたりして喜ぶ瞬間を作ろうと必死です。また戦争以前にやっとの思いでイスラエルから許可を得てエジプト旅行した際の楽しかった写真を、次男や長女、長男に見せて「いつかまたエジプト旅行しようね」と励ましています。もちろん戦争が終わっても、ガザ域外に旅行に出かけられる保証は何一つありません。しかし、子どもたちのわずかな希望のためにも、できる限りの励ましを続けています。

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シャディが7月に家族でエジプト旅行した際の写真。ガザの人たちにとって戦争以前からガザの外に出ることは非常に難しく、やっとの思いで旅行ができ、子どもたちは束の間の喜びを感じていました

またシャディは次男だけでなく、7歳の長男の状態も心配しています。「長男は、2019年のイスラエルによる空爆以降、吃音がはじまりました。精神科を定期的に受診したり、サッカーや空手に取り組んでみたりするなど、状態が良くなるようにできることを続けてきました。しかし80日も続く激しい攻撃で、吃音の状態は悪くなり、体調も崩していました。どうか子どもたちのためにも、一刻も早く停戦になってほしいです。」

そう嘆くシャディは、現在もインターネットが何とかつながる時にオンラインで精神科医に相談をしてできることを続けています。また私もシャディの子どもたちの状態を聞き取り、臨床心理士に個別で相談をして、そのアドバイスをシャディに伝えるなど、できる限りのフォローをしています。

ガザ地区220万人の半数は18歳以下の子どもたちです。イスラエルの無差別な攻撃は、命だけでなく、今を懸命に生きる子どもたちの心身を極限状態に追い込み続けています。パルシックは引き続き、即時停戦を求めていきます。そして緊急支援の準備をしています。この記事を読んでくださった皆さまも、どうか一刻も早い停戦となるようSNSでの共有や、またご家族・ご友人など周囲の方たちとお話しいただくなど、引き続き関心を持っていただけますと幸いです。

(パレスチナ事務所 ガザ事業担当)

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体調が少し回復して笑顔を届けてくれたシャディ(右)長女(中央)長男(左)

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