- 東ティモール
- 経済自立支援事業
花卉栽培により農村地域の女性たちの収入向上と家庭での子どもの栄養改善を目指します
プロジェクト背景
東ティモールでは、5歳未満の子どものおよそ50%が発育不全の状態にあり、特に山間部農村地域はその割合が高くなっています。パルシックは、2019年から2022年にかけて「ふりかけ普及と食生活改善による栄養改善事業」を実施し、学校給食を通じて子どもたちの栄養改善に取り組んできました。
この事業のなかで、給食の調理担当者を対象に料理教室を開催しましたが、その過程で分かったのは、料理教室に参加した女性が新しい知識や経験を得ることを楽しみ、前向きに取り組む一方で、家庭での日常の食生活に栄養知識を反映させるためには、女性たち自身が自由に使うことのできる収入をもつことが不可欠であることです。
東ティモールは、独立後の国づくりにおいてジェンダー・クォータ制が導入されるなど女性への機会均等が制度面で重点化された一方、家庭内での女性の地位は依然として低く、お金の使い道を決めるのは男性です。男性は冠婚葬祭など親族間のしがらみによる出費も多く、なかなか家庭の食生活の改善にまで手が回りません。
そこで、女性が取り組みやすい切り花栽培を通じて自由に使えるお金を得られるようにし、同時に身近な食材から摂取可能な栄養知識を学び、活動から得た収入を家庭での栄養改善に繋げる取り組みを始めました。
プロジェクト内容
東ティモールのなかでも特に子どもの発育阻害が著しい山間農村部の3県、アイレウ県、アイナロ県、エルメラ県で女性たちによる栄養改善グループを作り、栄養改善に向けた目標を立て、その実現に向けて農業からどれだけの収入を得るか計画します。 グループには前事業で作った栄養研修の動画や教材を使って料理教室を実施し、身近な食材で栄養バランスのとれた献立を紹介します。
果樹や野菜など農業からの収入が限られている女性たちには切り花栽培技術を導入します。カトリックが人口の9割以上を占める東ティモールでは結婚式やお墓参り、教会行事に花の需要が高く、家庭の軒先では色とりどりの花を育てています。しかし商業用の切り花はまだ普及しておらず、首都ディリではインドネシアからの輸入切り花が高値で売られています。
活動地の山間部は花卉の栽培に適しており、比較的小さな面積で手入れがしやすい花卉栽培は家事や子育てに忙しい農村女性にとって管理がしやすいと言えます。気候や地理条件の似ている隣国インドネシアから活動地に適した品種や栽培方法について学び、市場への出荷のための体制や道路など運搬のためのインフラを整えます。
この事業は、日本NGO連携無償資金協力の助成および皆さまからのご寄付により実施しています。
現地からの声
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アイレウ県女性グループ キタさん
新しい花の栽培技術を習得して、グループで菊の栽培を開始できることが楽しみです。アンスリウムなどは栽培してきた経験があり、栽培量も増やしているので、市場に出して収入につながるようにしていきたいです。また、アイレウ県は依然として子どもの栄養状態が良くない地域であることがデータで示されているので、栄養ワークショップにはぜひ近隣地域の人たちも参加してほしいです。