ガザ緊急支援:水汲み容器を1,420世帯に配付しました
- 活動レポート
戦争開始から11カ月が経とうとするなか、水の確保はガザの人びとの生命線の一つとなっています。ガザ地区中部のデイル・アル・バラ県に、水タンク26基の設置と給水支援が完了した7月(前回記事)、パルシックのガザスタッフは新たな問題を目の当たりにしていました。それは「水の供給や利用できる井戸が近くにあったとしても、清潔な水汲み容器がなく、人びとは不衛生なバケツや料理油の容器を洗って飲料水をためている」という現状でした。そのような代替容器で水を汲むと、油や泥が水に混ざり、人びとの健康状態に影響を及ぼしかねません。
清潔な水の確保がきわめて困難なガザ地区では、感染症、皮膚病および胃腸疾患の蔓延、また子どもたちを中心にポリオの感染拡大が懸念されています。2023年10月7日の開戦当初は1つ3シェケル(約120円)だった水汲み容器は現在約15シェケル(約600円)ほどですが、ガザの人びとの多くが収入源を失い、食料や生活必需品の購入にも苦しんでいる状況です。
水汲み容器1,420個(1世帯に1個配付)をガザ地区内の業者から調達し、ガザスタッフのサハルの自宅に保管している様子
容量10リットルの水汲み容器は柔らかいプラスティック素材で軽く、折り畳みが可能です。強くて穴が開いたり水がこぼれたりする心配はありません
そこで、7月下旬から8月上旬にかけて、炎天下の中、ガザスタッフは支援が行き届いていない小さなキャンプ4箇所を訪問し、計1,420世帯(1世帯に1個)に水汲み容器を配付しました。受け取った人たちから、「パルシックは、私たちのキャンプに初めて支援を届けてくれた団体で感激しています」との声をたくさんいただき、ガザスタッフも安堵しました。
水汲み容器を受け取る人には身分証明カードを持参してもらい(16歳以上のパレスチナ人は身分証明カードを所持していますが、避難を続ける中、紛失してしまう人もたくさんいます。その場合、現物ではなく戦争前に撮ってあった写真を見せてもらうこともあります)、受付時に名簿のリストと本人確認の照合作業を行います
日中は特に暑く、受け取りに来た人たちもスタッフも体力を奪われるため、ガザスタッフは朝7時半に自宅を出てキャンプに向かい、午前中に配付が完了するよう努めました
子どもでも簡単に持ち運ぶことができる水汲み容器は、受け取った子どもたちや保護者の方から喜びの声を多数いただきました
お母さんが外出中のため、代わりに受け取りに来た男の子。どうか子どもたちが子どもらしい生活を取り戻せるよう、私たちは願ってやみません
サハルからの声
最後に、ガザスタッフのサハルから、今回の配付事業で印象的だったことを共有してもらいました。
「1,420世帯の水汲み容器を配付ができて、一先ず安心しています。1つ15シェケル(約600円)ほどの水汲み容器ですが、テント暮らしの人びとはこれまで何度も避難を繰り返してきて、生活に必要でも持ち合わせていないものがたくさんあります。ですので、今回の支援は、人びとの生活に大きな違いをもたらすことになると信じています。この水汲み容器を使って、少しでも衛生的な飲料水の確保ができることを願っています。
配付が完了して達成感もありますが、悲しい出来事もありました。8歳くらいの男の子がお父さんの身分証明書を持って来たので、『本来はお父さんが取りに来る必要があるので、今からお父さんに電話をできるかな?』とたずねると、彼は『僕のお父さんは、2日前に亡くなったの。だから電話はできないよ』と答えました。それを聞いた時はとても胸が痛くて、私は彼を抱きしめてあげたくなりました。その後、同僚と相談して水汲み容器を一つ渡しました。
このようにガザの現場は、数えきれない程の悲しいストーリーであふれていますが、私はこれからも支援活動を続けることが自らの役割だと考えています。水汲み容器を配付したキャンプの中には、今回のパルシックによる支援以外、何も支援が届いていないところもあり、今後もこのキャンプの人びとに何か別の支援ができるか検討を続けていきます。」
水汲み容器を一人ひとりに手渡しするサハル(写真中央右側)。これからも緊急支援を続けていきたいと切望しています
このたびも皆さまからのご寄付で、ガザの人びとが乾季の夏を乗り切るため、不可欠な水の確保に役立つ水汲み容器を迅速に配付することができ、ガザスタッフおよびパルシック一同、深く感謝申し上げます。これからも、多様なニーズに少しでも応えることができるように、温かいご支援をよろしくお願い申し上げます。
(パレスチナ事務所)
*この事業は、皆さまからのご寄付により実施しています。