ガザ緊急支援:慢性疾患を抱える子どもや親を亡くした子どもに冬服を届けました
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2025年12月上旬、ガザ地区中部のデイル・アル・バラ市で、がんや腎臓病などの慢性疾患を抱える子どもや、戦争で親を亡くした子どもなど、計400人に冬服の上下セットと肌着を届けました。皆さまからの温かなご寄付により、この活動を実施することができました。ご支援くださった皆さまに、心から感謝いたします。ガザスタッフから活動のレポートが届きましたのでお伝えします。

洋服店で好みの冬服の上下セットと肌着を、試着しながら選びました

ガザの洋服店が、西岸地区の業者から調達した品質の良い衣類を用意してくれました
ガザスタッフからのレポート
ガザは11月から寒い雨季に入っています。戦争が始まって以降、3度目の冬です。この寒さは、2年間以上にわたって極限状態で命を繋いできたガザの人びと、特に病気を抱える子どもたちにとって、命の危機につながる深刻な状況です。
パルシックは12月上旬、小児がんや腎臓病などの慢性疾患を抱える子どもや、戦争で親を失った子ども計400人を対象に、冬服の上下セットと肌着を届けました。配付にあたっては、病院や透析クリニック、親を亡くした子どもへの支援を続けている団体や地域のコミュニティ組織と連携し、これまで支援が届いていなかった子どもを対象としました。
これまで2回実施してきた衣類の配付と同様に、今回も中部デイル・アル・バラ市の洋服店の協力を得て行いました。子どもたちの体調に配慮し、保護者と一緒に無理のない範囲で来店してもらいました。そして店内では、過去2回の配付同様、子どもたちが実際に試着をしながら好みの冬服上下セットと肌着を選びました。
冬服を届けるということは、単に子どもたちに暖かさを届けるだけではありません。それは、子どもたちの衛生状態、さらには尊厳を守ることにもつながります。2年以上に及ぶ大規模な戦闘で、たくさんの大切なものを失ってきた子どもたちにとって、日本の皆さまからのご寄付による暖かい冬服の贈り物は、「あなたの存在は大切です」というメッセージそのものです。

子どもたちがお気に入りの一着を決めて喜ぶ姿に、私たちガザスタッフも胸が熱くなりました
私にとって特に印象深かったのが、7歳のイブラヒム君のことです。イブラヒム君は、戦争で父親を失い、大人でも耐え難い経験をしてきました。テント生活が続く中、彼は寒い冬を乗り越えるための十分な冬服を持っていませんでした。冬用のジャケットやパジャマ、替えの肌着もなく、数枚しかない服を洗っては乾かす生活が続いているため、持っている服はすでに擦り切れていました。さらに、彼は栄養失調による重度の鉄欠乏症もあり、寒い日が続くと体調を崩しやすくなることを、母親は心配していました。
そんなイブラヒム君が、気に入った服を選んだ瞬間、彼の表情は明るく輝き、やがて涙を流し始めました。失った父親のことや、これまでの苦労を思い出したのかもしれません。彼は久しぶりに、温かさに包まれ、誰かに大切にされていると感じたようでした。
お気に入りの服を繰り返し触りながら「この色が大好きなの。着心地がとても良い!」と何度も口にしていました。隣にいた母親の目にも涙が浮かんでいました。「この服はこの子にぴったりです。今、この子に本当に必要なものでした。涙する息子の姿を見て、戦争前の生活を思い出しました。ほんの一瞬ですが、人生がまた美しく色を取り戻したように感じました」と、静かに語りました。

ガザスタッフにも手伝ってもらいながら、子どもたちは何度も試着をし、自分に合った服を選びました
また、もう一つ忘れられないエピソードがあります。がんと闘っている男の子が母親と一緒に洋服店まで一生懸命歩いてきました。もちろん、事前に「無理はしないでほしい」と伝えてはいましたが、彼は自分の名前が書かれた受取り用のチケットをぎゅっと握りしめて、小さな身体からはみ出るほどの大きな笑顔で現れました。しかし、痛みを感じているのか、一歩一歩ゆっくりと静かに歩いてきました。私が「体調は大丈夫?」と声をかけたら、彼は微笑みながら答えました。
「大事なことは、残りの人生を、勇気をもって続けることだよ」
私は思わず言葉を失いました。まだ幼いながらに、これほど厳しい病と向き合い、懸命に生きてきたことの重みを感じたからです。私は笑顔を返しながらも、胸が震えていました。その後、彼は治療のことや辛い日々のことを話してくれました。それでも、友だちと遊びたいと正直な気持ちも伝えてくれました。がんを抱えながらも一生懸命毎日を生きる強さと無邪気さ、そして揺るぎない決意を私は確かに感じました。
帰り際、彼は振り返ってこう言いました。
「うれしいのは、冬服をもらえたことだけじゃないんだ。僕たちのことを日本の皆さんが覚えてくれていたことだよ」
彼は片手に服を詰めた袋を握り、もう片手には、明日への希望を握りしめているようでした。その姿を見ながら、私は「勇気」とは何かを、長く考え続けずにはいられませんでした。私たち大人でも耐え難いこの状況で、幼いながらにがんを抱え、この2年以上を懸命に生き抜いた彼の言葉と強い心は、大人である私たちに”どう生きるべきか”を教えてくれたのでした。

店内は奥までずらりと冬服が並び、スウェットや厚手のジャケットまで豊富な品揃えでした
日本の皆さまからの温かいご支援は、子どもたちの命を寒さから守るだけでなく、子どもや保護者の皆さんに「同じ人間として大切に思ってくれている人がいる」という温もりと笑顔をもたらし、忘れかけていた希望を感じる瞬間となりました。子どもたちからは「私の存在は世界から忘れられていないと感じた」という声がたくさん寄せられました。
ガザはこれからさらに寒さが厳しくなります。子どもたちに引き続き、心も身体も温まる支援を届けていくため、今後ともご関心とご支援をお寄せいただけますようお願い申し上げます。
(パレスチナ事務所)
※この事業は皆さまからのご寄付により実施しました。
