特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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悪化するヨルダン川西岸地区の状況

  • コラム

昨年10月7日以降、ヨルダン川西岸地区の状況も急激に悪化しています。西岸および東エルサレムにおいて、84人の子どもを含む330名のパレスチナ人がイスラエル軍および違法入植者との衝突によって殺されています。負傷者は4,000人を超えています。西岸のジェニン、ナブルス、トゥルカレムの難民キャンプへのイスラエル軍による地上および空からの侵攻は107日以前に比べて激しさを増しています。

パルシックのパレスチナ事務所があるラマッラは何日間も続くような軍事侵攻は起こっておらず、これらの地域に比べて落ち着いてはいますが、しかし確実に雰囲気が変わっています。ラマッラ事務所のヤラから、ラマッラ市内の様子を報告します。

ヤラからの報告

いつもはエネルギーに満ちているラマッラも、10月7日以来、悲しみと静けさ、そして孤独感に包まれています。ラマッラにはたくさんのカフェやレストランがあり、普段は毎日夜遅くまでたくさんの人でにぎわっていました。しかし、今は多くのお店が早い時間に店を閉めています。緊急事態に備えて外食を控えようとする人たちが増えているのはもちろんですが、なによりも車で1時間ほどの距離しかないガザで無差別な大規模攻撃が続いているなか、いつもどおり友人や家族とコーヒーや食事を楽しむ気持ちには到底なれません。

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週末なのに全く人がいないお気に入りのカフェ

いつものラマッラ市内はラマッラ住民だけではなく、西岸内やエルサレムから通勤、通学、買い物などに訪れる人で日中は大変混雑していました。特に午後4時から6時は至る所で交通渋滞が発生し、人に会う約束があれば渋滞を考慮して早めに移動する必要がありました。しかし、今は厳しい移動制限のためラマッラ住民以外の人は減っていて、その必要はありません。

また、ラマッラでは毎年12月初めにクリスマスツリーの点灯イベントがある市役所前で、クリスマスマーケットが盛り上がります。しかし、今年はツリーも街路のデコレーションも設置されず、クリスマス用のギフトやお菓子の販促広告が店頭に並ぶこともありませんでした。(昨年のクリスマスの様子は、こちらの記事をお読みください。)

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ガザで殺された人たちへの追悼、連帯を示すためパレスチナ各地で、がれきの下でのイエスの誕生をモチーフにしたオブジェが置かれました。この写真はラマッラ市役所に設置されたものです。

私たちは残念ながら、パレスチナ自治政府がこの戦争を止める力を持っていないということを理解しています。そのため、さまざまな市民団体や個人が平和的なデモンストレーションを行って、世界に、アラブ社会に、イスラム社会に向けて、ガザの人びとへの無差別の大規模攻撃を止めてくれるように訴えています。デモには子どもから、お年寄りまで参加していますが、デモに参加したことでイスラエル軍に逮捕される人(特に男性が多いです)も出ています。デモ中に衝突が起こるわけではなく、後日、デモに参加した人の家にイスラエル軍が夜中に突然やって来て拘束していくのです。

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ラマッラの中心部にあるアルマナーラ広場で行われた年越しデモの様子

また、たくさんの人がソーシャルメディアを使い、停戦を求めて世界にメッセージを発信しています。しかし、ラマッラから検問所を通って違う地域に移動する際に、もし検問所でイスラエル兵に携帯電話を検査され、そのようなソーシャルメディアでの発信や、他の投稿に対する反応をしたこと(“いいね”や“シェア”するだけでも)が見つかると、何時間も検問所で拘束されるのではと恐れている人もいます。なお、これはイスラエル側やエルサレムに住むパレスチナ人に対してはもっと厳しく、罰金を科せられたり、逮捕されたりする人もいます。(参考記事はこちら

私も含めて、多くのラマッラ女子にとって、ショッピングは手っ取り早く気分転換する方法です。しかし、今はお店に行くと店内ではガザのニュースがスクリーンに映し出されており、店員もいつものように商品をすすめてくることがなく、活気に欠けています。ショッピング街は、ガザへの支援、そしてイスラエル製品を購入しないように呼び掛ける映像やポスターがあふれています。イスラエルの占領下で暮らしている私たちは、経済的にもイスラエルに依存せざるを得ない状況です。そんななかで、イスラエル製品を購入しないということは簡単なことではありません(*)

10月7日以降はパレスチナ内でも、イスラエル製品もしくはイスラエルを支援する会社の製品を買わないようにしようという声が大きくなっています。たとえば、該当する商品や会社をソーシャルメディアで拡散するだけではなく、パレスチナ産や他国産の代替品リストを拡散したり、店頭の商品が購入を控える対象に該当しているかどうかをバーコードで検索できるアプリケーションが開発されたりしています。

今回の戦争は世界にとってパレスチナ人の命の価値が低いという現実を、改めて私たちに突き付けました。しかし、私たちは私たちができることを通して停戦を世界に訴え続けるしかありません。新しい年は、傷ついた人たちが癒されるよい年になるよう祈っています。

*食料、日用品、医薬品など、生活に不可欠な多くのものはイスラエル製品です。またこれらの中には西岸地区の違法入植地で作られているものもあり、10月7日以前は入植地の工場や農場で西岸地区に住むたくさんのパレスチナ人が働いていました。そもそもパレスチナでは独自の通貨は流通しておらず、使われている通貨はイスラエルの通貨です。

(パレスチナ事務所)

イベント情報

1月24日(水)19時より、ガザ地区とヨルダン川西岸地区の今の状況、そこに暮らす人びとの声をお伝えするオンラインイベントを開催予定です。パレスチナ現地駐在員のほか、協働で緊急支援を行っている現地NGOの事業責任者で西岸地区在住のIzzatさんから、西岸地区の現状、人びとの声を伝えてもらいます。ぜひ、ご参加ください。

イベント詳細とお申込みはこちらから

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