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東ティモール:ふりかけ生産のこれから

  • 活動レポート

Boa Tardi(みなさまこんにちは)。昨年夏、クラウドファンディングで多くの皆さまに応援いただいた「ふりかけ・栄養事業」の「ふりかけ」の生産拠点であるアタウロ島を訪問してきました。ふりかけ工場の現在の状況をご報告します。

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アタウロ島のきれいな海

2019年から開始した「ふりかけ」普及と食生活改善による栄養改善事業では、学校給食調理担当者向けに栄養の基礎と、東ティモール産の食材を使った「ふりかけ」と地産の食材を活用した推奨メニューの実践調理する教室を開催しました。コロナ禍で学校自体が休校になったり、給食が開始されなかったりした事情もあり、事業期間中はいくつかの学校が給食へふりかけを導入する程度にしか普及ができませんでした。

そのため、学校給食の改善とふりかけ普及のフォローアップを目標に事業終了後に実施したクラウドファンディングでは、多くの方々にご支援をいただき、発育阻害の割合が63%と最も高いエルメラ県の小学校で、75校、250名の調理担当者の方々へ料理教室を実施し、「ふりかけ」を紹介することができました。

このような活動を通じて、同じく東ティモールで学校給食支援をしている国際NGOのケア・インターナショナルが「ふりかけ」に注目してくださり、1トンを超える「ふりかけ」の注文をいただきました。現在アイナロ県、エルメラ県、リキサ県、マナトゥトゥ県の学校給食でふりかけが利用されています。

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アタウロの豊かな海の幸(ウニもとれます!)

さて、そんな大量の受注をいただいたアタウロ島の「ふりかけ」工場の様子はというと、現在、工場では、女性グループメンバー7人が生産活動を行っています。

「ふりかけ」の原材料となる干し魚、乾燥モリンガ、ゴマなどは、アタウロ島の女性たち194世帯に栽培・加工研修をおこない、良質な原材料の生産が十分にできる環境を整えていましたが、約3年の間生産量が限られていたため、原材料の調達はセンターで活動するメンバーの家族など近隣者からのみにとどまっていました。今回、大量の原材料が必要になったことで、市場が求める量と質に対応していくためには、改めて研修に参加した女性たちとの協力関係づくり、そして、工場の本格稼働に向けてメンバー自体の関わり方、工場運営、品質管理などの「改善」が必要となっています。

大量受注という機会を得たにもかかわらず、女性グループメンバーは広く地域の女性たちに働きかけるという一歩が踏み出せずにいます。どこにハードルがあるのか、今回の訪問期間内に、女性グループメンバーと村長や集落長、牧師といった地域のリーダーとともに話し合う機会を設けました。

地域のリーダーたちは「ふりかけ」生産工場の行く末に関心を持っており、この機会を活かすこと、そして原材料調達については研修に参加した女性たちを含む地域の人たちとの協力関係づくりを構築することを望んでおり、そのための協力は惜しまない、とアドバイスしてくれました。地域のリーダーたちが「ふりかけ」工場を地域のためによりよい場所にしていこう、と見守ってくれていることを感じることができました。

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女性グループと地域のリーダーとの会合

地域のリーダーとの会合の翌日は、女性グループとのより詳細なアクションプラン作成のための作戦会議を行いました。この会合では短期的な目標を共有し、各メンバーの役割分担を明確にして、メンバー全員がひとつの目標に向かって協力し合える関係性を築くことを念頭に話し合いました。

女性たちはケア・インターナショナルからの注文を7月末までに達成することを目標に、月単位の生産目標数量を決めました。この生産目標数量に合わせて必要な原材料の数量を割り出し、調達方法の確認をおこないました。また、メンバーの能力やスキルを活かし、それぞれに適した役割分担(原材料調達、品質管理、清掃、資機材メンテナンス、勤務管理、納品、総務、資金管理会計担当)を決め、メンバー間のチームワークとコミュニケーションを改善することで、グループの生産性の向上を目指すこととなりました。

「ふりかけ」工場のあるアタウロ島ビケリ村の人たちは、普段から自分の意見をはっきりと言える人が多いと感じますが、若いメンバーから年功者へ意見することはやはり難しいようです。今回の話し合いの中では、普段言わないような思いを年齢問わず各メンバーが率直に打ち明けていて、それぞれがより効果的に工場運営できるようにしようと考えていることを感じました。

今後も「ふりかけ」工場で活動する女性たちをいくつかの面でバックアップしていく必要があると感じています。特に、事業初期には参加していなかった新メンバーが加わっていることもあり、改めて衛生管理、生産プロセス、導入機械の活用とメンテナンスなどの再研修は必須です。また、ケア・インターナショナルの事業が2025年度まで続き、今後も同様の発注をいただく予定であることから、その間に生産体制を整えつつ、学校給食への販路開拓をメンバーと一緒におこない、女性グループとしての活動の意義や自分たちの生産する「ふりかけ」が東ティモールの栄養改善に役立ち、社会に貢献できることを実感する機会をつくっていきたいと思います。

引き続き、東ティモール産「ふりかけ」の生産と市場開拓のこれからを見守っていただけましたら幸いです。

(東ティモール事務所 伊藤淳子)

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