特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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インターン日記:フェスティバル・カフェ・ティモール / Festival Kafe Timor

  • 活動レポート

Festival Kafe Timor がマウベシにやって来た。このフェスティバルは去年から始まったコーヒーの祭典である。去年は首都のディリだけで行われたが、今年は開会式をエルメラ県のファトゥベシ、そして閉会式をマウベシ、その間の1週間にディリや各地で関連イベントと、コーヒー産地を巡業するように企画された。コーヒーの品評会も行われ、ティモールNo.1のコーヒーも決まる。このフェスティバルは、東ティモールコーヒーをより多くの人に知ってもらうこと、コーヒーの品質向上そしてコーヒー生産者に畑の手入れの大切さを伝えることを目的として行われている。

私は、マウベシで行われる閉会式の主催者の一人としてこのフェスティバルに関わらせてもらった。そもそもなぜ、今年閉会式がマウベシでそして、主に地方でフェスティバルが行われたかというと、“首都のディリで行われたために参加者に外国人が多く、東ティモール人ではなく、外国人のお祭りになってしまった”という去年の反省があったからだ。その反省を活かし、地元住民にフェスティバルにより来てもらうのはもちろんのことの他にも2つ、私は目標を立てた。

1.コーヒーが最高にかっこいいものであることを生産者に伝える
2.地域の人たち、特に子どもたちと一緒にフェスティバルを作る

これが、私の中でのフェスティバルのテーマであった。

まず“コーヒーが最高にかっこいいものであることを生産者に伝える”ことについて、なぜそのように思ったか。

これまでコーヒーの集荷で数多くの集落を回り、たくさんの生産者たちと話をしてきた。そのなかで必ずしもすべての生産者が、自分がコーヒー生産者であることに誇りを持っているわけではないと気づいた。生まれた時から、コーヒー畑があり、コーヒーと共に生まれ育った彼らにとって、コーヒーに特別な感情を持たないのは普通かもしれない。しかし、マウベシのコーヒーは世界に誇れるコーヒーであるし、そもそもコーヒーというものに関わっていること自体が誇れることだということを生産者に知って欲しいと思ったからだ。そこで、フェスティバルでカッピングのワークショップを企画した。カッピングとは、ワインにおけるテイスティングのようなもので、コーヒーの味や品質の良し悪しを総合的に判断する方法である。そして、このカッピングをする姿、これがかなりかっこいい。様々な地域で作られる数種類のコーヒーを用意し、まず東ティモール人のカッパーたちにカッピングを披露してもらった。その姿にコーヒー生産者のみならず、農水省の大臣も釘付けになっていた。

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カッピングの様子

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カッピングを観覧する農水省の大臣(最前列左から2番目)

そのあとに、生産者たちにもカッピングを体験してもらった。普段、自分が作っているマウベシのコーヒーしか飲まないコーヒー生産者にとって、カッピングを通して、他の地域で作られているコーヒーとマウベシのコーヒーを比較するのは初めてだったであろう。地域によって、製法によってコーヒーの味が異なるということに驚きの表情を浮かべるコーヒー生産者を見ることもできた。

このワークショップに、予想をはるかに超えるほど多くの人が関心を持って参加してくれたことに胸が熱くなりっぱなしであったが、特に、コーヒー事業スタッフのネルソンが堂々とカッピングについての説明をし、それを農水省の大臣と生産者たちが聞き入っていたのには感動した。

このカッピングを通して、もう一度自分の仕事、コーヒー生産者であるということを考え直す機会となったら嬉しい。また、コーヒーがかっこいいものであるということに気づいてもらえたら尚嬉しいことだ。

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カッピングの説明をするスタッフのネルソン

次に“地域の人たち、特に子どもたちとフェスティバルを作る。”についてである。私はこのフェスティバルを自分たち実行委員だけで作り上げるのではなく、マウベシに住む地域の人たちと共に作り上げ、盛り上げたいと思っていた。特に、地域の子どもたちに参加してもらいたいと思った。そこで、巨大モザイクアートを作り、フェスティバルで飾ろうと決めた。モザイクアートとは、既存の画像を小さく分解して、エクセルのデータに変換して、その指示通りに色を塗り、それらをつなげることで、1枚の絵に仕上げるというものである。コーヒー生産者協同組合コカマウの初代代表、ヴィトリーノさんをモデルにした今回のアートは、縦に14枚、横に14枚、合計でA4用紙が196枚も必要だった。1枚の紙を仕上げるのに約30分必要とするこのアート、作り始めたのが本番の5日前ということもあり、本当に間に合うのか、という否定的な意見もあった。が、絶対に作りあげると心に決めた。教会の神父さんを訪れ、教会で勉強している子どもたちとこのアートを作る時間をもらったり、AHHA英語学校に行き、そこの生徒と一緒にアートを作り行ったりもした。このアートは、すべてのパートを組み合わせて初めて絵になるというもの、色を塗っている段階、塗り終わっても正直何が何だかよくわからない。それでもみんな丁寧に塗り、1枚終わると「もう1枚やりたい!」と言って手伝ってくれた。

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モザイクアートを手伝ってくれた子どもたち

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子どもからペンと紙を奪い取ってまで熱中する教会の先生と奪い取られた子ども

最終的に、196枚のうち1枚も欠けることなくアートが集まり、縦4メートル×横3メートルのモザイクアートがフェスティバル当日の明け方にギリギリ完成した。特に、パルシック水事業担当スタッフのアデリーノの助けは大きく、毎晩遅くまで色塗りを一緒に手伝ってくれた。準備の最終日、コカマウの農家の人たちにもモザイクアートを手伝いに来てもらったが、その時私は手が離せなく、アデリーノに農家の人たちに色塗りの仕方を説明するようにお願いした。彼は、年配の人達に教えるのが恥ずかしいのか、嫌だと言ったが、「頼む!」と半ば強引に押し付けた。10分ぐらいして自分の仕事が終わり、彼らの様子を見に行ってみると、アデリーノが農家の人たちに、笑顔で教えていて、上手く色塗りしている農家の人に「そうそうそうそう!!」と言って、優しく接していた。普段見ることのできないアデリーノの一面を見ることができた。

フェスティバル当日には、アート作りを手伝ってくれた子どもたちも来てくれ、自分たちの作ったアートに感動した様子で、自分が色を塗ったパートを探す子もいた。

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モザイクアートとモデルになったビットリーノさん(左から4番目)

この閉会式のために1か月前から準備を開始したが、インターナショナルゲストを含め600人の来場者があった今回のフェスティバル、時間に追われる場面が多々あった。しかしそんな時にこそ、パルシックスタッフのみならず、コカマウのメンバーや地域の人の助けがあった。会期は朝から晩まで、フェスティバル終了後の後片付けまで、一生けん命共に汗を流してくれた。今回の閉会式はたくさん反省点もあったが、一人でも多くの人がコーヒーについて考え直すきっかけになったらうれしいし、来年もまたマウベシでフェスティバルが行われればこれほど喜ばしいことはない。

(マウベシ事務所 インターン 煙草将央)

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