特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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シリア国内での食糧生産活動を開始しました

  • 活動レポート

シリアの内戦は大部分の地域では収まってきていますが、依然としてシリア国内にいるシリア人約2,100万人の内、約1,300万人が食糧へのアクセスが困難であると言われています[※1] 。内戦により破壊されたインフラの修復などの復興が開始されれば、生活環境は改善すると期待されますが、欧米によるシリア政権に対する経済制裁が、シリアの経済に影響を及ぼしています。

経済制裁によって物価上昇が起こり、一番生活が苦しい貧困層の人びとは、生活に必要な物資さえ十分に購入できない状況に長年陥っています。加えて最近では、新型コロナウィルスの感染拡大により、今まで優先されていなかった医療や衛生用品への支出が増加し、生活環境をさらに悪化させています。

内戦の爪痕が残る事業地

被害を受けた家もまだ修復がされていない

追い打ちをかけるように、去年からの降雨量の減少および気温の上昇が、農業に打撃を与えています。シリア北東部ではダムの水位がゼロになったダムもあります。シリア東部を流れるユーフラテス川の水位も下がり約550万人の飲み水や農業灌漑用水や電力発電に影響が出ているとも言われています[※2]

パルシックは2020年より、シリア国内での農業生産支援を行っています。現在もホムス県を中心に、国内避難民や帰還民、生活状況が厳しいシリア人を対象に、野菜やオリーブの栽培、食品加工の再開支援を行い、最低限の食糧安全保障を確保して、コミュニティのレジリアンスを向上させる活動を行っています。

活動地域の農家は、物価上昇により種や肥料が十分に購入できず、購入する種の量を減らしたり、安くて質の悪い種や肥料を購入したりして農業を継続しています。しかし安い種の購入すらできず、農業を止めてしまった世帯も多くあります。パルシックは、弱体化しているシリアの食糧生産の向上に貢献するために、農業を再開できていない農家に対して、質のいい種と肥料を配布し、農業を再開できるよう支援を行っています。

11月にはシリアの特産品であるオリーブの収穫を行いました。収穫時には、日雇いで助っ人を雇うのですが、現在シリアでは日雇いの賃金も年々上昇しているため、オリーブ農家が人を雇えず、せっかく実ったオリーブを100%収穫できずにいます。そこで、支援の一環として、日雇いを雇用し収穫作業を行いました。

収穫されたオリーブの実

オリーブの収穫の様子

日雇いは収穫だけでなく剪定にも必要ですが、十分な日雇いが確保できず余分な枝や葉が生え、オリーブの質が悪くなってしまった木も現地では目につきます。

手入れができなかったため傷んでしまったオリーブの木

手入れができなかったために葉と枝が増えすぎてしまったオリーブの木

農業の再開支援に加えて、農作物の加工支援も始めるため、現在支援農家の選定とあわせて、加工活動に参加する女性の選定を行っています。
生活環境はなかなか改善しませんが、現地の農家が農業を再開でき、地域での食糧生産量が増加することによって、地域の自立の一歩になればと思っています。

[※1] WFP: Syria Food Security, HNO 2021 MYR, P2,P5
[※2] OCHA: Water crisis in northern And North East Syria, P11 

(レバノン事務所 大野木)

*この事業はジャパン・プラットフォームの助成と、みなさまからのご寄付で実施しています。

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