特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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サリーリサイクル事業 ムライティブの新しい女性グループ

  • 活動レポート

2015年、ジャフナ県からムライティブ県にも事業地を拡大したリサイクルサリー事業。4月に新たに加わったのは、コクライ村、コクトルワイ村、ムリワイカイ村の3村の女性たちです。コクライ村、コクトルワイ村は、パルシックが事業を展開しているムライティブ県の漁村の中でも街の中心部から距離があり、2012年に漁具配布の事業を始めた時は、まだ人びとが20年に及ぶ避難から戻り始めたばかりで、トタン板と椰子の葉で作った小さな家々が草むらの中に点在している状態でした。それから3年が経ち、村の景色は大きく変わりました。今では、ブロック造りの家が建ち、草が生い茂っていた土地も整備されて畑として活用されています。店舗の数も増えて、村らしい暮らしが戻って来ました。

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コクトルワイ村のインドゥラさん、帰還後今まで住んでいた家(右)と現在建設中の新しい家(左)

ムリワイカイ村は、2009年の内戦終了直前、最後の激戦地として戦場になった場所です。スリランカ政府軍に追われLTTE(タミル・イーラム解放のトラ)軍と共に逃げてきたタミルの民間人1万人近くが、ここで命を落としたと言われています。内戦が始まってすぐに政府軍、LTTE軍の基地となり人びとが離れたコクトルワイ村やコクライ村と違い、最終段階まで人びとが暮らしていたこの地域。内戦末期には、海岸や畑、教会の土地などに仮のテントを建て、人びとが所狭しと暮らしていました。内戦終結と同時に立ち入りが禁止され、約3年後の2012年末に解放された時は、鍋釜などの生活資材、軍服を含む衣類、身分証明書など様々なものが辺り一帯にまだ散乱しており、戦闘当時の生々しさが残っていました。そのムリワイカイ村も今は、大半の土地が整備され、家が建ち、畑も耕されています。

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土地が解放された直後は瓦礫しかなかったところに現在は家が建ち並ぶムリワイカイ村

人びとの新たな生活がそれぞれの村で始まる中で、女性たちが家でできる縫製作業を通して収入を得られるよう支援し、家計の一助とすることが、サリー事業の目的の一つです。ムライティブ県沿岸部で暮らす人びとの収入源は主に漁業と農業で、どちらも天候などの外部条件に大きく影響を受けます。ここ数年、干ばつの翌年には洪水になるほどの大雨と、農業の立て直しには厳しい気候が続いており、漁業も特に沖合漁業が不振です。女性たちは、世帯の家計を助けるため、魚の水揚げの手伝いや、日雇いの畑仕事などもしていますが、どちらも安定的な収入ではなく、中にはコロンボなど遠方の工場で働いている女性、さらには海外へ出稼ぎに行く女性もいます。

内戦後の暮らしは、その傷跡と共に生きることでもあります。サリー事業に参加するメンバーの中にも、夫や親族を亡くし家計を一人で支えている、夫が地雷で足を失った、または今も国内外で身柄を拘束されたまま、など、決して容易ではない状況に置かれている人が多くいます。皆、多かれ少なかれ何らかの形で内戦の影響を受けており、内戦終結後6年が経った今もそのトラウマと闘う人も少なくありません。

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ムリワイカイの研修で使わせてもらっているお家の玄関には、戦争で亡くなった家族の遺影が掲げられている

このような環境の中、それでもムライティブの村々に戻って来た女性たちは、新しい生活に前向きで、困難を乗り越えて村の暮らしを少しでも良いものにしようと積極的です。現在ムライティブ3村でサリー事業に参加している女性は約50名。裁縫の研修に集まる女性たちのエネルギーには、こちらが圧倒されることもしばしばです。研修で習得した新しい技術を取り入れ、商品を作ることに皆意欲的で、特にコクトルワイ村の女性たちは刺繍の技術も高く、細かい刺繍をとても丁寧に仕上げます。ミシンで縫うだけのものに比べると複雑な作業ですが、女性たちは皆、「もっと作りたい!」とこちらが用意した材料だけでは間に合わないこともあるほど。サリーの布をパッチワークした上から刺繍を重ねたきれいなクッションカバーやバッグが出来上がっています。

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コクトルワイ村の女性たちが作ったクッションカバー

7月からは、コロンボで毎週土曜日に開催されている「グッドマーケット」というイベントに不定期で参加し、サリー商品を販売しています。グッドマーケットは、スリランカ各地の有機食材や環境に配慮して作られた手工芸品を販売するイベントで、毎週約50の団体が全国から集まり、それぞれの商品を販売します。「サリーコネクション」商品の売れ行きはまずまずで、コロンボでこのような活動に興味がある人びとの間で、少しずつサリー事業のことを知ってもらえるようになってきました。最近は、グッドマーケットのブースまでサリーの寄付をしに来てくれる人もいます。

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グッドマーケットでの販売の様子

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11月9日付けの現地英字紙「Daily Mirror」にもプロジェクト内容が掲載された

これからもコロンボを中心とした地元の人たちに商品を知ってもらい、ムライティブ、ジャフナの女性たちの新しい生活への思いと市場がうまく結びつくよう、販路の拡大と商品の品質向上に力を入れていきます。

サリー事業のブランド「Sari Connection」は、facebookでも記事を更新しています。ぜひサイトでの応援もよろしくお願いいたします。

(ムライティブ事務所 伊藤文)

(この事業は、JICA草の根技術協力事業パートナー型の支援を受けて実施しています。)
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