農業を通じて、持続可能な暮らしと地域の支え合う力を育む
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- 西岸地区における循環型社会のモデル形成事業
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パルシックは2019年から、ヨルダン川西岸地区のナブルス県北アシーラで、循環型社会のモデル作りに取り組んでいます。
2024年からは、地域で食の安全や環境保全などのコミュニティ活動を行う女性グループTANWA(タンワ)と協働を開始し、地域の女性たちとの取り組みに力を入れています。
また、地域住民による家庭菜園づくりをサポートする活動も始めました。パイロット事業として、15世帯が家庭ごみや農業廃棄物を活用し、野菜やハーブを育てています。
2025年9月末には、堆肥実験場において「コミュニティ農業:食料主権と癒し」をテーマにワークショップを開催しました。「食料主権」とは、地域の人びとが土地や水を使って食べ物を育て、暮らしを守る方法を自分たちで決める権利のことです。

堆肥実験場に植えているアカシアの木の下でワークショップを開催
ワークショップには、コミュニティ開発に長年携わり、生産者と消費者が直接つながるコミュニティ農業の実践者でもあるルブナさんを講師として迎え、持続可能な農業やコミュニティ農業がもたらす社会的な効果について、参加者同士で学び合いました。
ルブナさんは、地域で家庭菜園の取り組みが広がり、循環型社会作りが進むことで、家庭ごみの削減につながるだけでなく、新鮮で健康に良い食材を安定的に確保できるようになり、地域の食料主権の強化にもつながると強調しました。これは、占領下で農地や水、市場へのアクセスが制限されているパレスチナにおいて、とても重要な点です。
さらに、社会的・経済的に不安定な状況が続く中でも、農作業を通して自然とつながること自体が心の癒しとなり、地域の人たちが交流する大切な時間にもなると、自身の実践から得た気づきも共有してくれました。

28名が参加。女性を主な対象としたが、コミュニティ農業に関心を持つ男性の参加も
ワークショップではこのほか、薬を使わない病害管理など、農業に関する技術的な課題についても話が及びました。また、家庭菜園づくり活動に参加しているマンワさんが、生ごみを活用した家庭菜園の経験を共有してくれました。

家庭菜園づくりに参加しているマンワさんの畑。雨季が始まる10月中旬に植えたキャベツ、レタス、ジャガイモ、ねぎなどが育っている
終了後、参加者からは「パイロット事業の家庭菜園の見学をしたい」、「子どもを対象としたワークショップも開催してほしい」といった声が寄せられました。今回のワークショップは、環境に配慮した取り組みを地域の人びとが協力して行うことで、食べ物だけでなく、癒しや連帯感、そしてより持続可能な未来への希望を育めることに気づかせてくれました。
(パレスチナ事務所)
※この事業は、地球環境基金および地球環境日本基金の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。
