10年目のマレーシアフィールドワーク ―現地で出会う人びとにとっても意義ある体験を模索―
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マレーシアでの大学生を対象にしたフィールドワークを始めてから、10年になります。ようやく今年になって、ペナンはコロナ禍以前の街に戻りました。この10年の間に、ほとんど風景が変わらないのは、世界遺産に登録され、保全されているジョージタウンの中だけではないかと思うほど、ペナンは変化をしつづけています。海沿いのガーニードライブや、小さな漁村が残っていたタンジョン・トコンの海は埋め立てられて消えてしまっていました。
フィールドワークでは、世界遺産として保全された街並みを歩き、多文化共生社会のあり方を学び、開発に直面する漁民の保護や環境保全活動を行う現地のNGOの活動に参加します。今年は2校の受け入れをしましたが一校からは17名の参加がありました。マレーシア社会の多様性は学生の多様な関心を受けとめられることがわかり、学生はそれぞれの視点で関心分野の理解を深めていきました。イポーでは先住少数民族の人たち(オラン・アスリ)が暮らす村の訪問とジャングル内の施設でのアクティビティを行い、チャレンジングでもありましたが、学生同士の助け合いだけなく、同世代のNGOスタッフとの交流により現地の人たちとの関係性を深めるのに良い機会にもなりました。

ジョージタウンでの街歩きの様子

環境NGOでの環境保全活動に参加
もう一校からは、例年と同じく5名の学生が参加しました。こちらにはクアラルンプールでの街歩きが加わり、ロヒンギャの人たちを含むミャンマー難民が暮らす街スラヤンと、クアラルンプール内の移民の小学校2校を訪ねました。クアラルンプールで働く移民の多くはマレーシア国内で「資格外」の存在であり、難民条約を批准していないマレーシアでは自由のない「かごの中の鳥」の状態を脱する方法が見つかりません。そんな厳しい状況で暮らす人びとですが、「日本の学生の訪問はそれでも希望を与えてくれる」と現地のNGOのコーディネータは言います。今回はソマリア移民のお宅を訪問し、その暮らしぶりを知り、民族料理を一緒に作りごちそうになりました。大変な生活の中で、「一時ではあっても楽しい時間を過ごせた」と受け入れ家族は話されたそうです。
フィールドワークでは学生がマレーシアでしかできない経験をし、学び、将来の生き方を考えることだけではなく、出会う人びとの人生に何か貢献できる体験になる内容を模索しつつ実施していきたいと考えています。
(マレーシア事業担当 大塚照代)