東ティモール コーヒーの生産地を訪ねるツアー 2025 開催報告 「コーヒー1杯分の学び」
- コラム
夏真っ盛りの8月初旬、東ティモールツアーを無事に開催いたしました。
成田空港よりインドネシア・バリ島を経由し東ティモール・ディリへ。海辺の首都で国の歴史と現在の風に触れ、内陸部マウベシでは収穫最盛期を迎えたコーヒー農家の暮らしに交じり、収穫から加工・カッピングまで、全てがコーヒー1杯に繋がる、コーヒー1杯では足りないスタディツアーです。
国際協力を志望する10代の高校生から、独立運動時代の支援活動に縁のあった60代の方まで、今年も幅広い方がご参加くださった8日間、総勢10名の東ティモールツアーを報告します。
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旅の目的地、マウベシまでは首都ディリから車で3時間ほど。標高1,200~1,700mの山間部にコーヒー生産者組合コカマウの生産地があります。気温はぐっと下がるので、冬服が必須です。
マウンレテ集落へ
今年の東ティモールツアーは、マウンレテ集落のコーヒー農家を訪問しました。マウベシの中心部から東へ、車で2~30分ほど上がった地点にあるマウンレテはエディ山のすそ野の集落です。マウベシのコーヒー生産者組合コカマウへは2021年から22世帯が加入しています。組合への加入以前から有機栽培に取り組み、先にコカマウ組合に加入していた他の集落を通じてコーヒーを出荷していました。
マウンレテ滞在中、一行が寝泊まりする場所や食事、畑の案内などを提供してくれたのは集落のコカマウメンバー、ジョアオンさん一家です。集落の少し手前までは平らにうち固められた道路があり、時折石材を載せ白い砂煙をたてながら走るトラックとすれ違います。小さな小学校もある集落の中心から、バイクの轍の形に泥が乾いて固まった道を上っていくと、ジョアオンさんとご家族が住む見晴らしのいい丘があります。

マウンレテ ジョアオンさん一家が住む丘から見えた日の出
集落の方との初対面はやはり緊張がありましたが、子どもから大人まで、笑顔で受け入れてくださりました。のちに分かったことですが、ツアー一行はジョアオンさん一家が今の場所に住み始めてから初めて訪れた家族以外の人ということでした。2日間のマウンレテでの滞在は、食事の準備をともにし、冷え込む夜は満点の星のもと焚火を囲み、子どもたちとボールで遊んだり、テトゥン語やマンバイ語と日本語を教え合ったりなどしながら過ごしました。

歓迎の儀式で

みんな音楽が好き
若返ったコーヒーの木
真っ赤に色づいたコーヒーの実の収穫が毎年の行程での目玉。中でも今年は“収穫体験”の想像を超える量の収穫に恵まれました。コーヒーの古木の下で豊作を願うお祈りをし、集落の副代表エドゥアルドさんの案内でコーヒー畑へ。コーヒー畑は林冠にモクマオウ、林床近くには落ち葉の間からタロイモが顔をのぞかせる、適度に明るく静かな森でした。木々に紛れて姿が見えなくなるので、「ホ~ウィッ!」と高い声で時々合図をします。
コーヒーの果実はビー玉くらいの大きさで、真っ赤に熟れて鈴なりになっていました。枝から丁寧に手で摘んで、ヘタは来年に実をつけるために枝に残します。その方法で、パルシックの同行スタッフや集落のみなさんを含む20名ほど(集落の小さな子も大活躍でした)でコーヒー収穫に挑むこと2時間。気付けば30kgが入る袋の、真っ赤に熟れたコーヒーの実がパンパンに入ったものが4~5つも!
収穫の表年であったことに加えて、集落で精力的に取り組んできたコーヒーの木の若返りプロジェクトが実を結んだことを実感しました (コーヒーの木の若返りプロジェクトについてはこちら)。

鈴なりに実ったコーヒーの実

協力して収穫
体験以上の体験
収穫したあとは摘み取ったコーヒーの実をさらに選別し、果肉を取り外して洗い、乾かすところまで集落の方と一緒に行いました。高地で涼しいとはいえ、沢山とった果実を熱帯の日差しのもとで選別し加工するのは一苦労。豊作の喜びとその先の選別や加工がもつ大変さを集落の方とともにした時間は、ツアー一行と集落の方が心を通わせる一番のきっかけになりました。

摘んできたコーヒーの実を囲んで、黙々と選別作業

果肉除去機を回し、果肉を取っていきます
旅の終わり
私は今、20代ですが、この旅では多くの同世代の人たちが活躍しているのを目にしました。日本に帰ってきて、東ティモールとは遠く距離が開いてしまった今も、彼らとの出会いが自分のなかで温かな力となっているのを感じます。
同じように現地の方にとっても、ツアーに参加してくださった方にとっても、この旅での出会いが、これからの日々に心に残るやさしい余韻となって、温かな力となるのを願っています。
(東京事務所 竹内玄)

マウンレテ集落でのお別れ会