特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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スリランカ独立以来の経済危機と人びとの暮らし

  • コラム

2009年5月の内戦終結後、農業や工業の成長を後回しにし、観光産業に依存してきたスリランカは、現在1948年の独立以来最大の経済危機に直面しています。外貨不足により2021年から米や粉ミルク、砂糖、セメントなどの価格が高騰、さらに2022年に入ってからは燃料が輸入できず計画停電が人びとの生活に影響を与えています。また、輸入に頼っている医薬品の不足も同様に深刻です。2019年4月のイースター連続爆破事件、その後に続く新型コロナウイルスの世界的大流行、化学肥料・農薬の輸入禁止、そしてロシアによるウクライナ侵攻によって経済悪化は深刻化していきました。

この状況のなか、適切な手を打てない政府に対して、今年の3月から市民による抗議運動が始まりました。コロンボの中産階級の若者を中心に、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領、マヒンダ・ラジャパクサ首相の退任、また政治家による数々の汚職に対する検証と責任追及を求めて平和的な抗議をコロンボの中心地にあるゴールフェース公園で続けています。5月9日に、マヒンダ首相の辞任発表を受けて政権支持者が、抗議運動を行っている市民を攻撃したことに端を発し、各地で混乱が生じ死傷者が出ましたが、11日には市民による平和的な抗議運動が再開しています。ただし、現政権のトップを退任させるだけでは事態を打開することはできません。過去4回の首相経験のあるラニル・ウィクラマシンハ氏が新首相に就任しましたが、今後も困難な状況が続くことが予想されます。

即座の解決の筋道が見えない中、深刻化する経済危機はスリランカの人びとの暮らしを直撃しています。パルシックが長年事業を実施してきたスリランカ北部の漁村でも、人びとは物価高騰、燃料不足の影響を受け、苦しい生活を強いられています。ジャフナ事務所の元事務所代表のアジット氏に、事業地の様子を聞きました。

アジット氏による現地の状況の報告

  • 小麦、米、パン、粉ミルク(ミルクティ用* )、調理用のガス、ガスの代わりの薪など、あらゆるものの価格が高騰し、これまでのように家で調理するのが難しい。*スリランカでは朝夕に砂糖のたっぷり入ったミルクティーを飲む
  • 燃料不足が続き、ガソリンスタンドには長蛇の列ができている。先日、夜にバイクの給油にガソリンスタンドに行ったら、既に50人の人が並んでいて2時間以上待ったが、深夜12時にガソリンは無くなり、給油できないまま帰宅することになった。自分の後ろには更に60人の人が待っており、ガソリンを得られないまま帰途についた。
  • 政府が一部手当しているものの、漁に出るのに必要な船外機用の燃料が全く足りておらず、漁民は十分に漁ができず、漁獲が減っている。その結果、漁民の収入が減ると同時に、市場での魚の価格も高騰している。
  •  淡水漁業をしているムライティブ県の内陸の村では、燃料がないために漁に出られず収入が得られないだけでなく、燃料不足でバスの運行も止まってしまって町に買い出しにも行けず困っている。その村では野菜も穀物もあらゆる食料が不足していて、多くの世帯が一日に1回しか食事を口にできていない。
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昼間のガソリンスタンド前には三輪車や商業車による長蛇の列

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夜にガソリンスタンドに並ぶ人びと

こうした状況を受け、アジット氏と連携し、必要な食料・生活用品を小規模ながら提供する準備を始めています。

ぜひ皆様からご寄付・ご支援をお寄せください。

(スリランカ事業担当 高橋知里、西森光子)

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