パレスチナ・ ヨルダン渓谷の農民が丁寧に育てたマジョール・デーツ
- コラム
パルシックは2025年2月から、パレスチナのフェアトレード団体「アル・リーフ」(アラビア語で「農村」という意味)と協力し、ヨルダン川西岸地区のヨルダン渓谷で栽培されているマジョール・デーツのフェアトレードを始めました。
ヨルダン川西岸地区の東側、隣国ヨルダンとの間には、北のティベリアス湖から南の死海までヨルダン川が流れています。その川に沿って広がるのがヨルダン渓谷です。谷はとても深く、地球上で最も標高の低い陸地のひとつと言われており、死海周辺では海抜マイナス400メートルにもなります。年間を通して気温が高く、さらにヨルダン川によって運ばれた養分が堆積しているため、農業に適した肥沃な地帯です。

しかし現在、このヨルダン渓谷のおよそ9割の土地では、パレスチナの人びとが自由に土地や水を利用することができません。1967年の第三次中東戦争以降、イスラエルによる占領が続き、入植地や軍用地の拡大が進められてきました。さらに、ヨルダン川の水も上流でイスラエルによって取水されているため、渓谷を流れる水量はわずかです。
そのような厳しい状況の中でも、パレスチナの農民たちは土地を守りながらマジョール・デーツの栽培を続けています。デーツとは、ナツメヤシというヤシの木になる実のことです。なかでもマジョール・デーツは、大粒で濃厚な甘みをもつ最高級品種として世界的にも高い人気があります。
.jpg)
マジョール・デーツの農園。デーツの木は成長すると高さ20メートルほどにもなる。雌株と雄株があり、農園で栽培されているのは実をつける雌株。開花の時期になると、雄株の花から採った花粉を人工的に受粉させて実を育てる
デーツの収穫は年に1回で、ヨルダン渓谷のマジョール・デーツは9月から10月にかけて収穫期を迎えます。収穫された実は加工場に運ばれ、熱風と冷却によって虫や微生物が処理されたあと、果実表面のクリーニングを行い、大きさや表面のしわの程度などで選別され、パッキングされます。興味深いことに、デーツはドライフルーツでありながら、加工工程で乾燥させる必要はありません。木に実ったまま太陽の力で完熟し、自然に乾燥していくからです。
.jpg)
収穫される直前のデーツ

デーツ農園のフィールドマネージャー、マナールさん。収穫が終わると、すぐに翌年の収穫に向けた準備が始まる。安全に農作業を行うため、まずは不要な葉やトゲを取り除く
今年の収穫を無事に終え、ほっとしているデーツ農家・ワリードさんからメッセージをもらいました。
「今年の初めにパルシックの方たちが私の農園を訪ねてくださいましたが、直接お会いすることができず残念でした。それでも、日本にパレスチナのマジョール・デーツに関心を持ってくださる方たちがいると知り、とても嬉しく思いました。私たちは、美味しいデーツを作るために、一年を通してナツメヤシの木を大切に育てています。そして、私たちの土地を守る努力を続けています。そうした私たちの仕事を日本の人たちも応援してくれていると知ると、本当に励まされます。パレスチナへの連帯に感謝します」

ワリードさん。今年1月、ワリードさんの農園を訪問したが、その時会うことができなかった。数日前からジェリコ県外に外出していたワリードさんは、訪問の当日には戻る予定だったが、イスラエルによる検問所の封鎖により帰宅することができなかった
ガザでの人道危機の陰で、2023年10月以降、ヨルダン川西岸地区でもパレスチナの人びとの生活非は常に厳しい状況が続いています。ヨルダン渓谷では、ベドウィン(遊牧民)の人びとがイスラエルの入植者や軍によって家や土地を追われ、大切な家畜を失っています。
現地のフェアトレード団体アル・リーフによれば、今のところデーツ農家が土地を追われたり、農園を破壊されたりしたという報告はありませんが、農業用水の利用制限はますます厳しくなっているといいます。
こうした状況の中でも、太陽の恵みと農家の努力が詰まった、今年収穫されたばかりのマジョール・デーツが日本に届きました。11月1日からパルシックのフェアトレードショップ「パルマルシェ」で販売を開始しています。ぜひ、その濃厚な甘さと柔らかな食感をお試しください。
(パレスチナ事務所)
