PARCIC

シリア難民

レバノン:子どもたちが公立学校に通えるようになる日

パルシックでは、レバノンの内陸部べカー県バル・エリアスにある教育センターで、5歳児の子どもたちを対象にした就学前教育を実施しています。日本では、いわゆる幼稚園の年長さん組にあたります。数年前からパルシックではこの事業を実施してきましたが、今年の4月より新しく画期的な教育制度を導入することができました。

それは、この年長さん組が所定の時間(350時間)以上通うと、レバノンの教育省から正式な修了証をもらうことができ、卒業後はレバノンの公立学校に1年生として通うことができるようになったことです。ここまで読んだ皆さんは、そんなこと当たり前じゃないかと思われるかもしれません。

しかし、シリア難民の子どもがレバノンの公立学校に通うのは、実は非常に難しいことなのです。特に、シリア難民の数が最も多いバル・エリアスでは、公立学校は常に満杯で、シリア難民の子どもたちは学校に登録しても待機児童となり、長い場合は数年かけて待たなければならないのです。そのため、多くのNGOが補習クラスや教育センターなどを開講し、レバノンの公立学校に通うことができるまで、教育を代わりに提供しているのが現状です。

しかし、先ほどご紹介した教育センターは、レバノンの教育省から就学前教育センターとしての正式な認可をもらうことができたため、正式な修了証を子どもたちに授与することができるようになりました。レバノンでは、教育省の認可を受けている教育センターは非常に少なく、ここに至るまでの道のりはたやすいものではありませんでした。私たちの提携団体であるSAWA(Sawa for Development & Aid)のスタッフとパルシックの職員が一丸となって努力してきた賜物と言えるかもしれません。

子どもたちは8月末には年長組を卒業することになっています。子どもたちが修了証を受け取り、晴れてレバノンの公立学校に通うようになる日が、今から待ち遠しく感じられます。

タブレットを使った最新教育も導入している。ゲームや歌を取り入れ、子どもが受け身ではなく、自発的に学べるように工夫している。

タブレットを使った最新教育も導入している。ゲームや歌を取り入れ、子どもが受け身ではなく、自発的に学べるように工夫している。

この教育センターでは、5クラス計100人のシリア難民の子どもたちが毎日学んでいます。レバノン教育省の指導方針に従い、高い基準で選ばれたレバノン人のベテランの先生たちが、アラビア語、算数、英語などを教えています。子どもたちがいつも楽しみにしているのは、木曜日。なぜなら、木曜日のお昼は皆で校庭に集まってご飯を食べる日だからです。教育センターのニダール校長先生は、どんなに仕事が忙しくても、必ず木曜日は先生たちと一緒に子どもたちにパンやジュースを配ります。

自身もシリア難民で30年以上教育に従事してきたニダール先生は言います。

「現実は厳しく、私にできることは限られているかもしれない。でも、ここで子どもたちが集まって、嬉しそうに食事している風景を見るのが何よりも嬉しいんだ」。

皆で楽しくおしゃべりしながら、具入りパンと果物ジュースを頂きます。

皆で楽しくおしゃべりしながら、具入りパンと果物ジュースを頂きます。

この教育センターに通う子どもたちのお家を訪問しました。教育センターのすぐ横にあるシリア難民キャンプに住むお母さんの1人は、双子の娘(5歳)を教育センターに通わせています。家で2歳と4歳の子どもたちをあやしながら、お母さんはこう語ってくれました。

「子どもたちは、教育センターに通うのが大好きなんです。特に英語が好きみたいで、家でも英語で話したり、歌ったりするのを見ていると、私まで嬉しくなります。実は、私はシリアのダラア出身で、小学校しか卒業していないんです。だからこそ、娘たちにはちゃんとした教育を受けさせたい。この教育センターを卒業したら、念願のレバノン公立学校に通うことができるようになります。いつか、シリアに帰っても、ちゃんと娘たちが教育を受け続けることができるように、親として精一杯のことをしたいと思っています」。

シリア内戦直後にレバノンに逃げてきて、早7年以上、同じキャンプに住んでいる。暮らしぶりは何もよくならず、4人の子どもを必死で育てる毎日の中で、子どもが教育センターでしっかり学んでいることが何よりの励みになっているという。

シリア内戦直後にレバノンに逃げてきて早7年以上、同じキャンプに住んでいる。暮らしぶりは何もよくならず、4人の子どもを必死で育てる毎日の中で、子どもが教育センターでしっかり学んでいることが何よりの励みになっているという。

(レバノン事務所 南)