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パレスチナ

パレスチナ:COVID19下、自粛ムードのイード(ラマダン明け祝祭)

イスラム教徒にとってラマダン(イスラム暦9月、断食月)の最後の10日間は自らの運命を変えるライラ・アルカダル(“Night of Power“)を待つ大切な時間。預言者ムハンマドは「ラマダン最後の10日間は、奇数の夜に、ライラ・アルカダルを探しなさい」と言っています[1]

実を言うと誰もライラ・アルカダルがどの夜のことなのか正確にはわかっていないので、大抵のイスラム教徒はラマダン最後の10日間の夜すべてを、いつもよりも多くお祈りをしてクルアーンを読むかたちで観測しています。

パレスチナでは、数千人のイスラム教徒が、ライラ・アルカダルの期間に祈るため、厳重なセキュリティのただなか、イスラム教第三の聖地[2] であるエルサレムのアルアクサモスクを訪れます。とはいえ、ここ数年ずっと、イスラエル軍はお祈りのために西岸からエルサレムに行く許可を、30歳以上の女性ないし50歳以上の男性にしか出していません。

2019年ラマダン期間のエルサレム旧市街

ラマダンになると世のお父さんお母さんたちは子どもたちがリクエストする新しい服や、魚、イードで作るお菓子の材料、チョコレートなどを買うために市場に走ります。

イスラム暦10月(シャワル月)の初日、すなわち新月を経て三日月が空に現れたら、イードが始まります[3]。多くの国でイスラム教徒は、夜空に月が現れるかどうかを自ら空を見上げて確かめるのではなく、ニュースで追っていますが、(実際の月の出現ではなく)固定された太陰暦に従っている人もいます。でも、大抵の人は、新月の後の月の出現を観測している天文観測機関の公式アナウンスを利用します。世界各地でイードがいつから始まりいつ終わるのかは12日程度異なります。

イードを一番満喫するのはもちろん子供たち。イードの間、子どもたちは、翌日思いっきり遊ぼうと、夜、真新しい服を準備していつもよりも早く眠りにつきます。ムスリムっ子であれば誰でも似たような思い出があるはずですよ。

この素晴らしい祝日を、私たちはサラット・アルイードとして知られるイードの礼拝で迎えます。この特別な朝の礼拝は1年に2回しかありません。青空の下で営まれ、みんなが自分たちの一張羅を来て参加します。そうしてお祭りが始まるのです。

イードの一番の楽しみどころはイーディーヤを集めること[4]。イーディーヤは両親やおじさん、おばさんたちが配ってくれるイードのお小遣いです。金額は年齢によって異なります。例えば、子どもたちの場合、一人につき10~100シェケルが相場(1シェケル=約30.5円)。大人の場合[5]100シェケルか、それ以上。もちろん、金額はそのおうちごとに違います。

新しい服を着てイードを楽しむ子供たち。よく見ると、手にお小遣いを集めるための小さな袋を持っています。

アラブ世界で共通の慣習としては、「フェシーフ(塩漬けの魚)」をイード初日に食べる」というものもあります。人々はフェシーフに使われた大量の塩でおなかにたまった毒素を取り除いてくれると信じており、この料理を作るのです。

イードの定番伝統料理、フェシーフ。

今年、COVID19の影響でモスクは閉鎖、ライラ・アルカダルやイードの礼拝も家で営まれることになります。パレスチナでは、自治政府が市民にイードの連休中は家にとどまるようにと通達し、外出禁止と移動制限も維持されます。

イードのお祭り気分は見られず、子どもたちも新しい服を買う楽しみを諦めなければならないでしょう[6]。通りは閑散とし、家族や友達の集まりはなく、今年ばかりはイーディーヤもないかもしれません。私たちは今まで経験したことがないような物悲しく寂しいイードに直面しています。それでも人々は、たとえ小規模であってもイードを楽しみたいと思っています。家でもできること、たとえばカェク[7]やマアムール[8]を焼いたりして、精いっぱい楽しい時間になるようにと努めています。

今回はマアムールのレシピを大公開しちゃいます!

[1] この日は、クルアーンが天から地上に下され、預言者が現れた特別な日であり、この日に神に祈り、願い事をすると叶うと信じられている。通常イスラム暦9月の25ないし27日と解されているが、クルアーンには厳密にいつとは書かれていない。そのため、ラマダン最後の10日間イスラム教徒は殊更熱心に礼拝に励み、クルアーンを読む。ライラ・アルカダルの兆しは、静かで敬虔な気持ちになる平和な夜であること、月が半月になることなどがある。ただし、ムスリムっ子の間では、「ラマダンも終盤になるとみんな疲れてだれてきてしまうため、熱心に礼拝に励んだりしなくなる。しかし25日か27日にライラ・アルカダルがあると思うと、みんな集中力を取り戻して礼拝に励み始める」といううがった見方もある。
[2] サウジアラビアのメッカ、メディナに次ぐ聖地。
[3] イスラム暦(ヒジュラ暦)は太陰暦なので、太陽ではなく月の満ち欠けにより1か月、1年の長さが決まる。毎年太陽暦である西暦と10日前後ずれていく。今年はイスラム暦1441年。夜空に月が観測されないとラマダンが明けないので、前日夜までイードがいつ始まるかが確定しない。今年のイードは522日ないし23日に始まると予測され、実際は23日に始まった。
[4] 日本でいうお年玉のようなもの。
[5]子供や女性に配る。
[6] ただし、最近やや規制が緩和されており、日中買い物袋をぶら下げた人は増えてきている。イード前の買いこみか。
[7] アラブ地域の焼き菓子。
[8] 中にデーツのペーストが入ったクッキーのようなお菓子。甘いお菓子が多いアラブの中でも控えめな甘さでとてもおいしい。

(パレスチナ事務所 ヤラ)