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パレスチナ

ガザ農家さんの課題に取り組む [1]ガザの水問題

2016年の1年間を通して、ジャパン・プラットフォームの助成を受け、2014年のガザ戦争で全壊した小規模農家さんの農業用温室再建に取り組んできました。ガザ地区では、イスラエルの地上侵攻や空爆によって369戸の温室が全壊し、2,862戸が部分損壊となっていました。その後部分損壊の温室については修復が進められてきたのに対し、全壊した温室の再建はイスラエルのガザ地区封鎖政策によって、支柱用の鉄材や雨どい木材などの必要な資材が入ってこないために2016年まで全く行われていませんでした[1]

しかし、協力団体である現地の農業NGO、PARCとの調査に基づき、ガザで入手可能な合板や代替資材を使うことで、全壊した温室の修復に取り組み、31世帯の温室を再建しました。併せて、より良い農業慣行の実践と持続可能な農業の実現を目指し、地域の農家さん61世帯(温室を再建した31世帯を含む)を対象に、総合病害虫管理(PM)や灌漑マネジメント、環境配慮型の農法の技術指導も実施しました。温室を失ったことで農業を再開できなかった農家さんたちも、野菜の生産を再開しています。

全壊した農業用温室

全壊した農業用温室

再建した温室で農業を再開した農家さん

再建した温室で農業を再開した農家さん

2017年6月、引き続きジャパン・プラットフォームの助成を受けて、ガザ地区の農家さんを対象とした新しい事業をスタートしました。ガザ地区の農家さんは様々な制約や課題に直面していますが、なかでも大きな課題の1つが農業用水の確保です。国連パレスチナ難民救済機関は2020年までにガザ地区は人が住むのに適さない状況になると述べ、背景のひとつとして水の問題を挙げていますが、水の問題は、人びとの生活だけに限らず、ガザ農業にも暗い影を落としています。

ガザの農業において主な水源となっているのは、地下にある帯水層(淡水)ですが、近年、

① 生活排水による汚染
② くみ上げすぎによる枯渇
③ くみ上げすぎで海水が混入したことによる塩分濃度上昇

などが大問題となっています。

灌漑用水の塩分が白く固まっている様子

灌漑用水の塩分が白く固まっている様子

今回事業対象としているガザ南部、ハン・ユニス地区東部では、地下水の塩分濃度上昇が著しく、雨季に貯めた雨水と混ぜて利用しても塩害に強い作物しか育てることができません。同じくラファ地区東部ではすでに地下帯水層が枯渇しかけていて利用できず、ラファ地区西部[2]からパイプで輸送してもらった地下水を購入しなければなりません。雨季(10月半ば~4月半ば)は雨を利用できますが、貯めた雨水もほとんど冬季の農耕で使い切ってしまいます。近年では気候変動により雨季がずれ込み短くなって、雨がほとんど全く降らない夏季(乾季)の水不足が深刻化しており、灌漑設備のない農家さんの中には、やむなく夏季は休耕せざるを得ない状況の人もいます。さらに時には1日2~3時間ともなるガザの電力事情により、井戸水のくみ上げや送水に利用するポンプの稼働時間が極めて制限され、夜間や早朝など電気が来る時間帯に合わせて農作業を行わざるを得ません。国境緩衝地帯に近い場所では、夜に農地で給水しているとイスラエル兵に狙撃されることもあり、危険と隣り合わせだといいます。

限られた農業用水をできるだけ効率的かつ効果的に消費することは、2007年から続く封鎖の中で農業を営むガザの農家さんの慢性的な課題であるとともに死活問題です。そこで、今回「貴重な淡水源である雨水をできるだけ効率的に集め、効果的に農業に利用する」ことを目的に、複数の農家さんの農業用温室を利用した集団的な集水・貯水のシステムを導入することを決めました。

さて、集団的かつ効率的な集水・貯水のシステムとはいったい・・・?

ヒントは地域の密集した農業用温室?

ヒントは地域の密集した農業用温室?

 

[1]イスラエルは「軍事目的に転用可能」としたものについて、ガザへの流通を厳しく制限している。その中には住宅やインフラ再建に必要なセメントや、家具用の木材なども含まれるため、ガザ地区の復興が進まない要因となっている。

[2]ラファ地区西部にラーイダという井戸がたくさん集まる地域がある。ハン・ユニスやラファ地区の東部へ水を送水しているが、ここでも水の塩分濃度は高い。

※この事業はジャパン・プラットフォームの助成および皆さまからのご支援によって実施しています。

(パレスチナ事務所 盛田)