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スタッフレポート

パレスチナ西岸地区、COVID-19との生活

イード・アルフィトル(ラマダンの終わりを祝うお祭り)の終了とともに、自治政府は移動規制を緩和し、パレスチナ各セクターに新しい規制を導入しました。COVID-19と共存しつつ、安全を確保するための方策です。例えば、体温計や消毒液をすべてのセクターでゲート前に備え付けるなどです。しかし、結婚式、お葬式、集会などの活動は許可されず、またコーヒーショップや美容サロン、結婚式ホールや公共交通機関は閉鎖のまま留め置かれました。

残念ながら、COVID-19の罹患数は再び増加し(パレスチナ保健省によると8月24日における現在感染者数は9,220名、死者147名となっている。検査キットの不足や検査機の故障、医療機関でのクラスター感染など脆弱な医療体制に懸念の声が上がっている)、自治政府はパンデミックの抑え込みの為、再び10日間のロックダウンを導入せざるを得ませんでした。今度は、町や村々に検疫用のチェックポイントを設け、人びとの移動を規制するとともに、自治政府の統制下にない地域にも緊急チームを派遣しました。

住民の協力が十分でない状況から、自治政府は新しい手段も導入しました。エルサレムやグリーンライン(第一次中東戦争停戦ラインのこと、グリーンライン内部は現在のイスラエル領を指す)内の人びとに西岸訪問自粛を要請し、ペナルティ制度を導入、いくつかのセクターは閉鎖のまま据え置き、週末の木曜夜から土曜の夜にかけては西岸内を完全ロックダウン下に置きました(※西岸の物価が安いことから、感染拡大が顕著であったイスラエルやエルサレムから週末西岸へ買い物に来る人が多く、この流れを防ぐための措置)。それでも万策尽きて、ケース数の増加を止めることができませんでした。他方、各大臣に対し、全セクターから業務再開要請が出され、自治政府に対策や措置を再考するようプレッシャーをかけるため、日々主要都市でデモも行われるようになりました。

ラマッラー市にある電気通信会社はソーシャルディスタンスを保って営業している。

COVID-19は、健康上の被害だけでなく、生活自体を無味乾燥にし、180度変えてしまいました。パレスチナの文化では、握手はとても大事なジェスチャーで、避けることはできません。もし握手をしない場合、それは相手を尊重していないという意味になってしまいます。そのため、人びとは、握手など身体的な挨拶なしにどうやって相手への愛情を表現したらよいのかと言っていました。これを抜きにしても、人びとはみんな、夏が来るのを楽しみにしていたのです。夏はお祝いの季節、結婚式や旅行の季節です。でも、COVID-19とともにある状況では、これらはすべてキャンセルせざるを得ませんでした。政府は結婚式や集会禁止を継続しており、万が一、実施された場合には法的措置をとると発表しています。そのため、多くの新郎新婦はパーティを家で小規模に行うか、パーティなしで行うかせざるを得ません。タウジーヒ(高校卒業試験。日本で言う大学入試)を受けなければならない生徒たちは、折角待ち望んでいたタウジーヒ終了のお祝いを縮小せざるを得ませんでした(※通常は、タウジーヒ終了の際、受験に使った資料や教科書を引き裂き、爆竹を鳴らし、車から身を乗り出しながら行進するなどのお祭り騒ぎになる)

いまやCOVID-19は町の人々の話題のタネになりました。皆日々、感染者数や現状への不満、咳をする人達への恐怖心を話し合っています。今私たちができることは、状況をもっと真剣にとらえることでしょう。立ち止まった歩みを再開し、元の日常に戻らなければならないというのも事実ですが、きちんと心に止めておかなければならないこともあります。私たちがこのひどい悪夢から抜け出るカギは、感染予防策の徹底と、ソーシャルディスタンスである、ということです。

ラマッラーのランドマーク的カフェでは、経済ロスにもかかわらずコロナウィルスならぬコロナビールを特別価格で提供。

(パレスチナ事務所 ヤラ)