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東ティモール

農業生産性向上を目指して ~事業3年目 等高線栽培の取り組み開始~

2014年9月より、森林保全型農業の支援事業は開始3年目となり、新たに等高線栽培の導入を始めました。

事業地マウベシでは、主要換金作物のコーヒーを中心に、主穀物トウモロコシや特産品であるインゲン豆を栽培し、余剰分を市場で販売して生計を立てている農家が大半を占めています。山に囲まれた当地では、日本で見るような平坦な土地に畑がある農家はごくわずかで、その多くが山の斜面を開墾して利用しています。

マウベシでは、草木を焼いた灰を作物の肥料分として用いる「焼畑農法」を伝統的に行っています。昔は人口もそれほど多くなく、無理せず作物生産が行える規模で循環していました。しかし、人口増加に加えて、独立した2002年以降急激に進む地域開発の影響もうけ、森林伐採などが拍車をかけ、過去の循環構造は崩壊の一途を辿っています。

その結果、乾季は水不足に陥り、土が地割れを起こす反面、雨季は断続的な降雨と、時に発生するスコールによって、傾斜地の土砂は川へ流されてしまいます。土壌中の貴重な有機物が流されてしまうため、作物の生長を阻害するだけでなく、時には植え付けた作物をすべて流してしまい、過去には食糧不足に陥ったこともあります。

私たちが始めた等高線栽培は、傾斜地の土壌流失を防ぎ、有機物を土地に蓄える役割を持っています。手法は、比較的簡易なものから石を積み上げる重労働なものまで様々です。現在では世界各地で実践されており、特にフィリピンなど山岳の多い地帯では、高い成果を挙げています。東ティモール国内でも、既に外国のNGO団体などによっていくつかの地域で実施されており、マウベシで始めるにあたってスタッフが視察へも行きました。

 

従来は草木を燃やして畑を綺麗にする。灰(黒い部分)が貴重な肥料分となる。

従来は草木を燃やして畑を綺麗にする。灰(黒い部分)が貴重な肥料分となる

住民に対して、資料を使いながら等高線栽培の説明をするスタッフ

住民に対して、資料を使いながら等高線栽培の説明をするスタッフ

 

これまでの経験から、簡易であまり重労働にならない手法を選んで、チーム内で情報を共有したのち、各集落でのトレーニングを実施しました。

まず、エーフレーム(A-frame)と呼ばれる道具を作成して、土地の等高線を測り、等間隔に杭を打っていきます。杭の場所と、杭と杭の間に、約50cm間隔で比較的生長の早い木の苗木を植えます。等高線に沿って木を植えることで、その木の根が張って土砂の流出を防いでくれます。植える木の種類は、作物の生長に必要不可欠な窒素を空気中から取り込むことが出来る樹種(窒素固定樹種)を選びました。有機物の流出防止に加えて、窒素を土壌中に取り入れて、作物生産性向上を目指すのが目的です。

 

等高線を測る道具、エーフレーム。石が中心に来た場所が等高線を示す。

等高線を測る道具、エーフレーム。石が中心に来た場所が等高線を示す

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等高線を測り、杭を打ち付けていく

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杭打ち後の畑

 

苗木は、運搬の手間を省くために各集落で苗床を作成、管理することにしました。今後も地域内でこの技術を普及できるよう、住民主体で管理していくよう、話し合いました。

 

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苗床を、管理しやすいよう、家と水場の近くを選んで作成

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苗床に種を播いたあと、バナナの枯葉で覆いをして、子どもや動物に 悪戯されないよう木の枝を上に置いて完成

 

スタッフが、集落へトレーニングに行った時の事です。

トレーニングでは通常、始めに等高線栽培の有用性を住民に対して説明します。しかし、マウベシの人々は、従来行ってきた「草木を焼く」ことをしないことが、なぜ作物生産性の向上に繋がるのか、理解することが難しいようです。

そこでスタッフは住民に問いかけました。

「集落内には川が流れていて、その川は北の稲作地帯へとつながっています。マウベシの豊かな土は、雨で川に流され、その栄養分が稲作地帯の増収につながっています。ですが、ここでは土に栄養が少なくなってしまうので、トウモロコシやインゲン豆も十分な生産量を得ることができていません。もし、肥えた土を畑にとどめることが出来れば、今よりも作物の生産性が上がるでしょう。」と話すと、農家の一人が「確かにそうかもしれない。そんな風に考えたことはなかった。」と答えました。

もう11月も半ばを過ぎ、雨期に入ってもいい頃なのですが、まだ2、3日サーっと雨が降っただけで、作物の植え付けに十分な水は確保できていません。本格的に雨が降り、トウモロコシなどの作付けが始まる頃に合わせて、各集落で選抜したプロモーター農家をモニタリングして、地域内に広めていく予定です。

国民の約80%が農業に従事しているといわれる‘農業国’東ティモールの明るい未来を共に築いていくために、時間はかかるかもしれませんが、我慢強く続けていきたいと思います。
(東ティモール事務所 宮田悠史)