PARCIC

シリア難民

トルコでシリア難民支援の活動を開始:食糧バウチャー登録

2011年に始まったシリアの危機は現在まで続き、内戦は悪化の一途をたどっています。戦火を逃れて国内で避難民となった人びとは760万人以上、国外へ逃れ難民となっている人びとの数も400万人以上にのぼると見積もられています。シリア北部と国境を接する隣国トルコは、現在250万人のシリア難民を受け入れており、近隣国で最大のシリア難民受入れ国となっています。

パルシックは2015年10月、現在も難民の流入が相次ぐトルコ南部シャンルウルファ県でシリア難民支援に動き出しました。

10月16日、パルシックはシリア国境に近いシャンルウルファ県ハラン市で、市内に滞在しているシリア難民の家族を対象とした食糧バウチャー配布支援への登録受付を開始しました。着の身着のまま逃れてきた難民の多くは、生活に必要な身の回り品を持たないうえに、避難先での生計手段もなく非常に困窮しています。食事すらままならず、どうにか生活をつないでいる家族も少なくありません。食糧バウチャーの配布は、こうした食糧状況を改善するために、シリア難民支援を行う多くのNGOが採用している手法の一つです。食糧バウチャーは銀行のキャッシュカードのシステムとよく似ています。カードには毎月一定の金額が振り込まれ、このカードを使って提携先のスーパーやお店で野菜などの食料を買うことができます。決まったものを一律現物支給する食糧バスケットと違い、それぞれの世帯が必要なものを必要なとき必要な分だけ購入できるため、例えば乳幼児がいる世帯はミルクの購入にあてる、家族にアレルギーがある世帯はそうした食品を避けるなど、難民世帯のそれぞれの事情に対応できるという利点があります。

6月に現地でシリア難民の状況を調査した際、ハラン市内には約200世帯の難民が滞在していましたが、10月も半ばを過ぎたこの日、登録会場にやってきた難民世帯数は517世帯まで増加していました。今回はハラン市内に住む避難民200世帯を対象にした登録であり、ハラン市郊外に住む避難民への登録受付は別の日に行う予定にしていましたが、どうやら「登録はこの一回きりで、今回行かなければ支援から漏れてしまうのではないか」と心配したハラン市郊外の難民世帯もたくさん登録会場に駆けつけていたようです。シリアの紛争が始まって現在までの5年間、ハラン市でNGOによるこのような支援は今まで一度もありませんでした。そのため、登録については事前にポスターなどを通して詳細を告知していたにもかかわらず、どの難民世帯もみな疑心暗鬼になっており、会場でもあちこちで登録希望を訴える郊外の難民世帯に対して、スタッフが辛抱強く説明している様子が見られました。
登録に来ていた人たちの中には、先着200世帯が支援対象となると勘違いしていた人もいて、9時30分開始予定のところ、朝7時に会場入りして開始を待つ人たちもいました。

今回、食糧バウチャー配布支援を希望する世帯の登録を終え、今後は家庭訪問を通して最終的な裨益者を選定していく予定ですが、おそらく選考が難航することが垣間見えた一日でした。

※この事業は、サポート・トゥ・ライフ(Support to Life)の協力のもと、ジャパンプラットフォームの助成により実施しています。
http://www.japanplatform.org/programs/syria-iraq-conflict2015/

sy_20151019d

登録会を告知するポスター

sy_20151019a

登録会場となった学校に集まっているシリア難民

sy_20151019b

登録の風景。登録事項は全てタブレット端末に記録していく

sy_20151019c

一緒に来た保護者が登録手続きを行っている間、行程で遊ぶ子どもたち

18歳のアレポ出身のヒシャム

20歳の兄と14歳の妹、12歳の弟と共に暮らしている。両親はシリアの紛争に巻き込まれて亡くなり、1年半前にハランに避難してきた。兄とヒシャムが働いて何とか生計を立てている。両親を亡くし、弟と妹の面倒を見るのが大変でないかと尋ねたところ、「自分達の状況は、他の人達に比べればまだましだよ」。

sy_20151019Hisham

58歳のフッダ

ラッカ出身で、ハランには6ヶ月前に3人の娘を連れて避難してきた。夫は紛争で亡くなり、2人の娘が農業の日雇い仕事で家計を支えている。娘2人は本来安静にしていなければならないほど健康状態が悪いというが、生活のために仕事を続けざるを得ない。

sy_20151019Fuda

10歳のワトハ(左)と弟(右)

3年前にハランに来て以来、まだ1度も学校に行った事がないため、いつか行ってみたいと目を輝かせる。ワトハの髪の毛は荒れ、顔にも既に多くのしわがあらわれていて、現在に至るまでどれほど大変な思いをしたのかが偲ばれた。弟のサンダルはぼろぼろで、一般的な生活品の購入も難しい状況にあることが見て取れた。

sy_20151019Watha

(シャンルウルファ事務所 大野木)