PARCIC

スリランカ

ムライティブ日誌#7 漁協の活動強化

パルシックがムライティブ県で事業を開始したのは2011年。一切の漁具を持たずに避難先から村に戻ってきた漁民さんがすぐに漁業を開始することができるようにと、2012年12月までの1年間、計約200人の漁師さんたちに、ボート、エンジン、漁網などの漁具を配布しました。

ボートで漁の準備をする漁師さんたち

ボートで漁の準備をする漁師さんたち

中でもボート、エンジンはそれぞれが数十万ルピーする高価なもので、内戦ですべてを失い村に帰ってきたばかりの人々の多くにとっては、自分で購入することが困難です。パルシックは、このボート・エンジンをムライティブ県の12漁協に、各5~10セットずつ提供しました。漁協を通してこのセットを受け取った漁師さんは、ボート・エンジン代の半分にあたる24万ルピーを、利子をつけて4年間かけて毎月漁協に返済する、という仕組みです。この仕組みにより、漁師さんたちが帰還後すぐに漁を始めることができただけでなく、再結成したばかりの各漁協が、回収した資金を蓄積し、さらにボートを増やしたり、少額のローンを組んだりすることで、より多くのメンバーと利益を共有しながら、組合の貯蓄を増やしていくことが可能になります。

日々の生活費のほかに、内戦で失った家の再建費用に子供の教育費用、さらにローンの返済・・・と多くの出費を抱える村の人々。月々の支払いが滞るメンバーがいるのは当然のこと、中には、ボート、エンジンを他村の漁民に売却してしまったり、又貸しをして利益を得たり、とルール違反をするメンバーもおり、返済の管理は容易ではありません。そのような問題が発生すると、パルシックのスタッフも出かけていき、漁協長やメンバーと話し合い、問題解決に努めますが、必要に応じてボート・エンジンの回収や警察への通報などの行動も取っています。スリランカ政府漁業省から派遣されている、Fishery Inspector(漁業検査官)と呼ばれる漁業振興担当者とも協力しながら、少しずつ、これらの活動を漁協だけでできるように、組合の自立も促しています。

スタッフによる毎月の会計確認(コクライ村)

スタッフによる毎月の会計確認(コクライ村)

問題解決がスムーズに行われるか、回収した資金が上手に活用されるかは、漁協の性格にも大きく依存します。パルシックが漁具を配布した漁協の中でも組合の発展に向けてとても積極的なのは、コーヴィルクディルプとカルナドゥカーニの2漁協。どちらも、ボート・エンジン費用の返済で蓄積された資金をもとに、メンバーを対象に一人当たり10,000~20,000ルピーのローンの貸与を始めました。カルナドゥカーニの前漁協長、スンダラムさんは「パルシックが企画したスリランカ他県の先進的な漁協を訪問する研修を通して、たくさんの新しいアイディアを得ることができた。資金が貯まったら、漁協独自の銀行の開設、製氷施設の建設、冷蔵車の購入など、すぐにでも実行したいことがたくさんある」と意欲的です。

研修として訪問したトリンコマリ県の漁協。皆熱心に活動や、組合が運営する銀行機能について話を聞きました

研修として訪問したトリンコマリ県の漁協。皆熱心に活動や、組合が運営する銀行機能について話を聞きました

コーヴィルクディルプでも、20,000ルピーのローンを既に19人のメンバーが受け取っています。ローンを受け取ったメンバーは皆、このお金で漁網を購入するとのこと。季節や獲る魚によって、違う種類を準備する必要のある漁網は、漁師さんたちにとって大きな支出の一つです。組合の秘書を務めるスレーシュさんは「まずはお金が必要なメンバー皆にローンを提供することが最優先。それが叶ったら、冷蔵車を買って漁獲を漁協から直接コロンボなどの大都市に輸送、販売したい」と夢を語ってくれました。

コーヴィルクディルプでのローン贈呈式

コーヴィルクディルプでのローン贈呈式

内戦によって長く続いた難民生活の後、村に戻り漁業、漁協の活動を開始した漁師さんたち。何もなかったところから、少しずつ、組合の形が取り戻されてきています。

(ムライティブ事務所 伊藤文)