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スリランカ

国連人権理事会と北部の状況の変化

3月3日から28日にかけて、スイス・ジュネーブで国連人権理事会の定例会議が開催されました。理事会は27日、国連人権高等弁務官事務所に対し、スリランカで内戦末期に行われた政府軍およびLTTE軍の両当事者が行ったとされる重大な人権侵害や関連犯罪について、包括的な調査を実施した上で、責任追及を実現するとした決議を採択しました。それに加え、内戦終了後も発生している拉致、拷問、脅迫などの人権侵害に対しても、現在も進行している問題として懸念が表明されています。昨年8月の国連人権高等弁務官ナビ・ピレイ氏、11月のイギリス・キャメロン首相の北部訪問の報告の中でも、スリランカ政府の人権問題への取り組みの不十分さは指摘されていました。

スリランカ政府は、今回もナビ・ピレイ氏をはじめとする人権高等弁務官事務所の組織としての中立性・独立性に疑問が残る、同事務所はイラク、アフガニスタンなどで行われている軍事侵攻に対して適切な対応を行っていない、などを理由に決議を受け入れられないこと、調査は独自に行うことを明言し、強硬な態度を示しています。4月1日には、理事会の決議に呼応する形で、西欧諸国で活動する16のタミル人グループの活動を「テロリズム」への関連があり、スリランカでのタミル人の分離運動を扇動する可能性がある、と禁止、違法とする決定を下しました。

会議の最中である3月15日、内戦中に行方不明になった家族に関する情報提供を求めるハンガーストライキに参加したことのあるタミル人女性が、キリノッチ県内の自宅で警察に逮捕されました。女性は、夫と息子が内戦中に行方不明になったまま、今も消息が分からず、キャメロン首相が北部を訪問した際に、政府による対応の遅さを訴えるためにストライキに参加、メディアに大きく取り上げられて注目を集めました。スリランカでは内戦終了後、数千人にも上るといわれる行方不明者に関する生死を含む情報が、いまだ正確には明らかにされていません。

15日、女性の自宅を、指名手配中の人物が潜んでいる可能性があるとして軍人数名が訪れた際、何者かが軍人へ向けて発砲し逃走した、というのが女性が拘束された理由でした。

この翌週には、事件の情報を集めるために近隣の村を訪れたスリランカ人神父2人が、「テロ誘導」の容疑で逮捕されました。彼らはこれまでも積極的に人権問題に関わってきた活動家で、彼らの逮捕が不当であるという動きがすぐに各地で展開され、2人は数日後に解放されましたが、逮捕後、政府による許可なしで海外への渡航を禁止することが通告されています。

女性の逮捕事件前後から、キリノッチからムライティブへ向かう道中には、新たに軍隊によるチェックポイントが置かれるようになり、ここ数か月は廃止されていた南部から北部へ移動する際の身分証確認も復活しました。この1か月で、地域での警察、軍隊による取り締まりが、以前より明らかに厳しくなっていることを肌で感じます。

これら一連の事件は主には、強くなる国際社会からのプレッシャーに対し、スリランカ政府が北部での軍隊の活動を今以上に縮小する意思がないことを示すため、また、戦争犯罪に関する情報が外部に漏れ出ることを阻止するためである、と見られています。しかし、実際に日々この社会で起きている事柄に関する情報を権力や脅迫を利用してコントロールするには限界があり、外部者としての立場から見ていると、政府の方針は時に無謀に見えることもあります。

今回の一連の事件を通し、ただでさえ不安定な状態に置かれていた帰還後のタミルの人々の暮らしが、さらに不安にさらされています。ムライティブにも、家族が行方不明なままの人や元LTTEの兵士が大勢おり、行方不明の家族を持つ人たちは行方の調査について、国外からの支援に頼る手段を制限され、また、元兵士の人々はいつ自分も逮捕されるか、という不安と共に暮らすことを余儀なくされています。

北部で暮らす人々の多くは、何にも代えて、内戦が終わったことに希望を抱いており、再び武器を取って闘いたい、そのことを支援したい、と感じている人に、村では今まで出会ったことがありません。26年間で彼らが失ったものはあまりにも大きく、同じことを繰り返すことの無意味さと、苦しさが、人々の間で共有されているからではないかと思います。そのような思いで日々を過ごしている人々の、希望やわずかな安心も奪うようなことはあってほしくない、と、切に願いながら、この1か月の状況の変化を固唾を飲んで見守っています。